エンジニア社長の俺が、よくある副業の誤解を語ってみる

ナレッジ

本当に多くの人が誤解している副業について、割と本気で語ってみる。

背景

ウチみたいな零細でも一応求人は出しているのだが、意外と応募は少なくない。
新卒と中途採用といった社員枠も、バイト枠もだ。

学生のインターンも対フリーターも社会人の副業も、諸事情で一まとめに「バイト枠」という求人となっている。
そのバイト枠のうち、ここ最近ではフリーターからの応募は少なく、学生インターンは減ってはいるものの継続的な応募があり、社会人の副業枠は増え続けている。

そこには、SAP業界にいるエンジニアからの応募もあれば、異業種つまり未経験からの応募もあって、20代からもあれば40代からの応募もある。

しかし、そこで、どうも応募者たちが副業について誤解をしているように思えた。
さらに言えば勘違い、もっと言えば思い上がりと言っていい。
悪意なんてないんだけど、夢見がちというかファンタジーかよ?と思うケースも多く、この記事を書くことにした。

なんとなくのイメージと残酷な現実

応募者の人たちは、みな口をそろえて言う。
概ね、こんな感じだ。

仕事の勤務時間が安定していて、割と早く帰ることができる。
平日の夜や週末は割と調整が利くので、そこを副業の時間に充てたい。
本業の仕事は代わり映えがなく、新しいことに取り組んでスキルアップしたい。
収入がもう少し欲しいというのもある(ここは、収入ベースの場合とスキルアップベースの場合があるけど)

ハァ~~~~~~~~~~・・・・・・・・・・・・
もうね、地獄の底まで溜息が出る。

夢見る少女そのものだ。
メイクとかコスメとかオシャレとか頑張ってれば、きっとイケメン石油王がプロポーズしてくれる!!!的な。

だいたいは、面接以前にこの夢を覚ましてあげるところから始まる。
普通に考えれば門前払いなんだが、毎回毎回ちゃんと対応している。
俺はなんていい奴なんだと、毎度本気で思っている。

目を覚ませ、とっとと起きろ

まず、リアルにイメージしてくれ。

君がヒマだという本業たる昼間の仕事だって、定時にもなればそれなりに疲れているものだ。
もっと寝ていたいところを起きて、嫌々ながら支度をして、通勤をして。
上司・部下・先輩・後輩・取引先に囲まれて、それぞれに相応な対応をし、自分の役割もこなす。
あー終わった、と思った時には起きてから10時間くらいは経っている。腹も減ったなあ。
今日は嫌なこと言われたなあ、一杯いきてえなあ。

ってところから、
「さあ、気持ちを切り替えて副業頑張るぞ!!!」

なんて、ならねーよ。

あるいは、どんなに負荷が低い仕事だって、平日月~金で仕事をしていれば、それなりに疲れもストレスも溜まる。
だから、週末や休日にカレカノとデートだの友達と会うだの趣味に没頭したいとか思うのは当たり前の話。
一人暮らしなら日々おざなりにしていた家事やら雑用やらをする時間も必要だろう。
そこで、さあ週末だ!金を稼ぐぞ!!自分磨きをやるぞ!!!なんて、ならねーよ。

まず、そんなシチュエーションをリアルに想像してみて欲しい。
いや、だから副業なんてやるななんて言いたいんじゃないんだ。
都合よく想像し過ぎだし覚悟が足りん、という話なんだ。

隙間時間にできて、自分のスキルアップにもなって、充実感も味わえて、やりがいもあって、本業とも両立できて、過酷なノルマに追われることもなく、いい人たちに囲まれながら過ごすことができて、お金もソコソコもらうことができる。
そんな都合のいい話なんて地球上に存在しねえよ、って話なんだ。

それでもやろうと思うなら、以下のケースをイメージして欲しい。
だいたいは、これらに収束されるはずだから。

とにかく金!金!金!コース

これが一番わかりやすくて、欲しいものがあるとか、金を貯めたいとか、借金があるとか。
モチベーションも保ちやすく、続けやすい。
だって、まず目標の金額があり、1か月あたり欲しい額があり、辛くても続ければ翌月には「目標とした金額」という明確極まりない見返りがあるんだから。

で、金自体が目的ということは、金額が安い副業は必然的に選ばない。
そして、金額が高いバイトというのは、専門的な知識や技術が求められる、シンプルに過酷、拘束時間が長い、深夜早朝などの時間帯のいずれかとなる。

専門的な知識や技術が求められるならば、後述する「激務で成長できる高収入コース」となるが、もし専門的な知識や技術が既にあるならばシンプルに本業で昇給昇格を狙うか転職で年収アップすればよいので、ほとんどはそうでないだろう。

つまりシンプルに過酷であるか、拘束時間が長いか、深夜早朝などの時間帯か。
まず前提として、どれもタフさみたいなものは身についたとしても、一般的な意味合いでいうスキルアップになることは殆どないだろう。
また、本業ありきの副業であるはずなのに、要は全部シンドイので生活や本業に負の影響を与えることになる。

見返りはクリアなんだけど、別にスキルは上がらず、シンプルにしんどい。

成長はできるけど金にならんコース

自分のスキルアップにはなるけど、今現在はスキルがないか低い状態。
だから大したことはできないから、必然的に得られる収入は低い。
だって、成果に寄与できないんだから。これから学んでいくんだから。

長い目で見れば、何らかのスキルが身について成長ができる。
ただ、その過程はシンドイもので、薄給に耐えつつ怒られながら学んでいかざるを得ない。

そりゃそうだよね。
本来は何かを学ぼうと思ったら、自学自習するか学校や訓練所に金を払わなきゃいけないわけだけど、なぜかお料理教室に通いながらギャラまで貰おうみたいな認識の人は少なくなくて呆れるのだが、本来そうだろう。

昭和の板前見習いが小遣い銭レベルで扱き使われながら仕事を覚えていくようなイメージ?
しかも、本業や生活や家事育児なんかをこなしながら、余暇の時間を削りながらやるという。

それでもイメージしづらかったら、陶芸や絵画に置き換えてもいい。
本来は月謝を払って教えてもらって学んでいくだろう?
それを働いているんだから給料くれ!ってなると、役に立たない以上は安いに決まってるだろ。

もし何らかのスキルが欲しい場合、本業で予め身につけていないなら、まずこのコースを選択する必要がある。
もちろん、腹を決めて転職するのはアリだが、そのリスクを負わず副業として取り組むならば、やむを得ないだろう。

激務で成長できる高収入コース

基本的には、既にある専門スキルを活用して取り組む。
だから、そういうスキルがあることが前提となる。

IT屋さんにとっては、割と身近かもしれない。
フリーランサーや起業をしていなくとも、人手不足や緊急事態なんかで案件の掛け持ちなんかを押し付けられたことはないだろうか?
それを意図的にやるようなイメージ。

専門スキルが求められる時点で、専門家としていくらかの責任は負うことになる。
そういった責任が発生するからこそ、見返りも大きいのだ。
半面、本業が忙しいとか、家庭の事情があるとか、そういった事情はガン無視されることとなる。
だって、責任を負うっていうのは、そういうことだから。

専門家として報酬を頂いて仕事をするということは、問答無用で経験値になる。
しかも、本業がある中で副業としても成立させるわけだから、そんな状況下でしっかり責任を負って仕事を完遂させることは、自分の実力をガッツリ高めることとなる。
そして、それに見合うギャラが得られるわけだ。

半面、そりゃあシンドイに決まっている。
俺自身、一人で2人月うけて寝るのが3時で7時起きとか、プロジェクト5つ掛け持ちでいつ寝てるんだかなんて状況があったが、心身ともに充実していた若手~中堅の頃だったからこそできたわけで、オッサンになった今は絶対にやりたくないと断言できるほど辛かった。

なお、専門スキルがない場合のこのコースは、人手不足や緊急事態だからとにかくやってくれ!だったり、体力勝負だったり、深夜早朝だったり、とにかく負荷がかかることが多い。
そのケースだと高収入は手に入るのだが、一般的な意味でのスキルアップにはつながるとは限らないことは注意。
(例えば、定型作業をぶっ続けで朝まで100個作っておけとか)

気楽な小遣いヒマつぶしコース

このパターンになることも、多いだろう。
だって、一番現実的なんだから。

余裕があるとはいえ本業がありつつ、生活がありつつ、しかも自分の時間がゼロになるのは嫌なわけで、例えば本業が終わった後で居酒屋だの警備だのバイトをしたり、週末だけ一日仕事をするとか。

金額で言えば、1か月で3~5万とか、どんだけ頑張っても10万がいいとこだろう(風俗や違法なものでないなら)
また気楽な分、自分のスキルアップに寄与するような業務であることは殆どない。

一方で、本業や生活に与える負の影響は限定的で、気軽に始めたり辞めたりできるのがメリット。
社会人が本業をやりながらできる副業なんて、こうなるんじゃないかな。

本業でないところで何かを取り組んだり、そこでできる人間関係があったり、いくらか収入が増えたり、それで何かを買ったり飲み代の足しにしたり、そんなに悪くはないと思う。
少なくとも、自分の家と職場の往復って人には世界を広げられることは殊のほか大きいはず。

じゃあどうすりゃいいのよ

諸事情により金が大事なら、「とにかく金!金!金!コース」一択。
切羽詰まった事情があるなら、現金を稼ぐことが最大の正義なんだから。

スキルアップを意識していないなら、無難な副業は「気楽な小遣いヒマつぶしコース」。
適度な刺激、適度な収入、適度なヒマつぶし。
ヒマしているから人は余計なことを考えるし、余計なことを言うし、余計なことをしちゃうわけで、ヒマが減れば無駄金も使わないし働いただけ金も増えるんだから。

スキルアップを意識している人は、そもそも副業としてやるべきなの?をまず考えてほしい。
プログラミングスクールに通うとすれば金を払わなければならないことは想像できるのに、新しいことを新しい環境でやって業務に寄与できないのに金が貰えると勘違いしている人がとにかく多い。目を覚ませ。

普通に、新たなスキルを身につけようと思うなら、本業の中で担当してみたり、配置換えしてもらったり、転職したりすればいい。
それを副業でリスクを負わず気軽に手軽にスキルと収入をゲットして~なんて妄想は、ベッドの中だけにしてもらいたい。

そして、本業あっての副業であり、本業あっての生活であり家庭であることは忘れてはならない。
金や経験が欲しいあまりに、副業でそれらに負の影響を与えてしまっては元も子もない。

もう一度念を押すが、副業がダメという話ではなくて、都合のいい妄想ばっかりしていないで具体的にイメージを深めて覚悟を決めろ、ということ。

IT/SAP業界の人たちへ

業界の人たちには、正直、副業はオススメしない。
「激務で成長できる高収入コース」だけはダメではないし、息抜きがてら「気楽な小遣いヒマつぶしコース」も悪くはないのだが、それなりに実力がついてそれなりの仕事を任されたら、深夜残業も休日出勤も全然あるんだから。

もし深夜残業も休日出勤もない!というなら、それなりの実力もないし、それなりの仕事も任されていないことの裏返しであることは残酷な現実として受け止めなければならない。
それなりの立場になれば、クソ忙しくて休めない時期もあるんだから、逆に休める時期は休んでメリハリつけた方がいい。

SAP業界は20年以上ずっと人手不足で、供給は常に需要を下回っている。IT全般だって似たようなもんだろう。
それゆえ人では欲しいし、ハイスキルな人材は引く手あまただし、市場価値が高まれば収入だって上がっていく。
これは、20年以上この業界にいて多くの人と共有できる真実であると確信している。

もし同じ会社にいて昇給昇進できないというなら、転職すれば絶対に収入や待遇は改善される。
実力さえ伴っているのならば。
そして実力が伴っていないなら、副業で補うのではなく、本業で高めるべきだと思う。
いや、実力があったとしても、更なる成長を続ければ、次のステージが待っている。

だから、既に業界にいる人たちには、副業ではなく、実力を高めて本業側を良くしていった方がいいんじゃない?と伝えたい。
もちろん働く会社や働き方にもよるのだろうが、少なくとも俺は実力と収入はある程度は比例してドンドンのびていったよ。

ただ、若手に関しては体力が有り余っていて無理も効く時期だからこそ、ダブルワークトリプルワークで経験を積み実力を高めることはアリだと思う。

その他の人たちへ

認識の甘い副業希望の応募者に、だいたい面接で「お料理教室に通ってシェフになれると思いますか?」と聞く。

料理を学ぼうと思ったら、お料理教室に通うのはいい。
でもそれって、月謝を払うという前提があるよね。

給料をもらうとしたら、なんらかの寄与をしなければならない。
つまり誰かの何かの役に立たなければ、ってこと。

また、シェフになろうと思ったら、実務経験が必須となる。
「シェフになる」であれば、居酒屋のキッチンバイトの方がよほどいいと思わないかい?
趣味で料理を覚えてみよう!であれば、それは副業じゃない。
それで金を貰おうなんて考えてはならない。

お料理教室に通ったうえで給料をもらう的な発想で副業をとらえていないかい?
本業ありきの生活や家庭なのに、そこに副業を加えてもバランスは崩れないなんて思っていないかい?自分はうまくやれるなんて思っていないかい?

今一度、考えてみよう。

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