うちみたいな豆粒のような会社でも、異業種転職すべく社員で応募してくれる人は少なくない。
そんな中で思った事や気づいたことを書いてみる。
前提
あくまで、俺の目線は「採用する側」だ。
だから、「応募する側」から見れば、偉そうだの何様だの思うかもしれない。
だが、反感を承知で言えば、そんなことを思う時点で、一般に企業側が積極的に採用したい人材ではないんだ。
というのも、実力者であれば、自分はどこでもやっていけるだとかそれなりのことはしてきたという実力や実績に裏打ちされた自信があり、少々ハァ?と思ったところで「なんかこいつイキってんなあ」とか「まあ好きに言ってれば?」くらいにしか思わないものだからね。
逆に、実力や実績がないから、自信がなく他者の言動に敏感で、だから承認の証である評価や待遇は欲しくて、でも現状の環境でやれるとこまでやるぞ!という粘り強さはない。
もちろん皆がそうとは言わない。
が、たくさんの応募者と接して、そう感じたことも多かったことは確か。
ただ、それが悪いのではない。
そこに気づかず、あるいは目をそらして、今感じている閉塞感や倦怠感からの逃避行動として転職活動をしても良い結果になんてならないんだ。
本当に伝えたいことは、それ。
仮に転職に成功したとしても、またそれを繰り返すことになって、実力も実績もつかないまま履歴書だけが汚れていく。
そうなると、ブラックSESやら派遣社員やらタイミーやら、どんどん世間一般でいう「下」のステージに移るしかなくなっていく。
なんだお前は偉そうとか、うるせーな説教かよとか、そんな風に感じた人にこそ読んでみてほしい。
何故なら、シンプルに若者たちに不幸になってほしくないからだ。
逃げの転職と攻めの転職
まず、企業側には明確にこの目線があることを知ってほしい。
どういう言葉を使おうが、人事に関わる人にはこの概念がある。
例えば、職場にはたくさんの人がいて、そこには人間関係がある。
雰囲気の良い職場もあれば、パワハラ・モラハラ・イジメがある職場もある。
求職者側には非がなく転職や退職に追い込まれるケースもあるだろう。
ただ、ここで説明を誤ると、どこにでもある人間関係を上手にできない人(=ウチの会社に来ても同じだろう)、そこから逃げた人(=ウチに入社しても怒られたり失敗したら逃げるんだろう)、だから採用しても仕方ないなという印象を与えてしまう。
これが、逃げの転職と思われてしまうとは、こういうこと。
ブラック企業で非常識なノルマを課され続けて付き合い切れないというケースも、伝え方を間違えてしまうと「役割をこなせない人」や「ノルマから逃げる人」に聞こえてしまう。
だから、逃げの転職という印象を与えない工夫をしなければならない。
あるいは、その印象を与えたとしても、一定の説得力のあるトークを。
少々無理矢理でもいいから、言い訳がましくないような。
例えば、キーエンスや五大商社など誰もが知るような会社に就職できたが、太刀打ちできない超人ばかりで正直ついていけずドロップアウトした・・・なんてのは俺的にむしろ好印象。
そもそも、なんらかの失敗があったとしても、それ自体には問題ないんだ。
地方都市は知らんが、犯罪行為でもない限り一度の失敗だけでその人を見限るほど東京という街は冷酷ではない。
ちなみに、攻めの転職とは、だいたいその逆。
そもそも自分に市場価値があることを前提として、今の会社の給与や待遇はそれに相応でない、強く慰留はされているが更に上のステージにチャレンジしたい、そんなようなこと。
これは、あまり若手には縁がない。
なぜなら、若手=経験が不充分なわけで、市場価値を証明しづらいからだ。
何らかの成功体験や実績があったとしても、偶然や一過性のものという印象が強い。
そもそも、そんなことがあったら今いる会社で有望株として扱われているわけで、ポジティブな辞める理由はないはず。
だから、若手の転職は逃げの転職であると思われてしまうことが多いし、実際そうであることも多いように思う。
じゃあ転職は無理だって言うのかよ!!
そうではない。
君たちには、若さという絶対的な武器があるじゃないか。
無くなってから気づいても遅い、若さ=将来性
そう、若手の転職なんて、ほとんどは攻めの転職ではなく、逃げの転職だ。
俺だけじゃない、大人たちはそう思っている。
ではなぜ、その中から採用するのだろうか?
それは簡単。
これまでの学歴や職歴-逃げの転職の悪印象+将来性>採用リスクや教育コスト
この式が成立するならば、採用した方が得だからだ。
簡単に言うと、これまでの学歴や職歴が大して評価するに足りなかったとしても、逃げの転職の悪印象が大してなければ、将来性があれば採用されるということ。
じゃあ将来性って何?というと2つあり、ひとつは端的に若さ。
若さの価値は、年を取るほど実感していく。
いや、若手だって無自覚に理解している。
もっとも、若いから多めに見てもらえる的な不完全な認識であり、真の価値は将来性だ。
もう少し噛み砕くと、「これから」の時間の絶対量が多いということ。
それを何らかの修練や成長に費やせば、ひとかどの人物になるということ。
そうならないかもしれないが、現状その希望があるということ。
いまの求人では、よほどの理由がない限りは応募者の年齢層を書いてはいけないというガイドラインがあるのだが、馬鹿げている。
求職者側からすれば年齢差別するなと思うかもしれないが、採用側から見れば、その希望が大きい人を採用したいし、あまり希望が持てない人は採用したくない、当たり前の話だ。
もちろん、人間としての成長なんて何歳になってもできるし、趣味でも技能でも身につけようと思ったら老人から始めたっていいだろう。
しかしそれは人生においての学びや成長の話であって、若者と老人どちらを長期的に育てていきたいか?と聞かれて若者を選ばない企業はいないだろう。
それは、中年や老人を差別しているということではなく、若者が特別なんだ。
それが将来性があるということなんだ。
その将来性が減っていったとき=若さがなくなっていったとき、それと引き換えに実力や実績を身につけていればOKなのだが、そうでなければ「市場価値も将来性もない人」になってしまう。
そして、労働市場はそういう人にとことん冷たい。
いや、それでも何らかの仕事はあると思うよ?
ただ、給料や待遇は自分が期待するようなものではないだろうね。
覚悟が知りたい、そして知る術
将来性って何?という話で、もうひとつは人間性だ。
随分とボンヤリした言葉だが、簡単に言えば「期待できる奴なのか?」ってこと。
そしてそれは、簡単にわかることはない。
少なくとも、書類選考や1時間程度の面接なんかじゃわからない。
(だから、期待できると思わせてくれるだけでもOK)
じゃあどうやって判断するの?というと、2つある。
「こいつ期待できなさそう」という足切り+「こいつ期待できるかも」という加点法だ。
前者の足切りはわかりやすいだろう。
やり取りの中でコイツ怪しいな・・・やめとこ・・・ってやつだ。
後者はちょっと難しいのだが、何をもって「こいつ期待できるなあ」と思うのか?
俺は、毅然と覚悟を示すことだと思う。
そして、覚悟を示すことができるだけの準備をすることだと思う。
異業種からIT業界に来ようという人たちに、俺がよくする質問が2つある。
1つは、「新卒からITに入った人たちには相当に頑張らないと追いつけないと思いますが、どのように追いついていきますか?」という質問。
よくあるのは、「しっかり勉強していきたいと思います」的な具体性ゼロの反応。
ひどい応募者になると、「えっ、なんでそんな酷いこと聞くんですか」的なリアクション。
いずれも、自分にどんな過酷な労働をさせる気だ!とか、いやいや実際に仕事がスタートしたらしっかりやりますよ!とでも思っているのだろうが、君が面接官だったらそんな返しをしてくる人とそうじゃない人どっちを採用しますか?って話。
一方、期待できそうかなという応募者は「自分の時間を削って」的に犠牲を払う旨を添えてきたり、「確かにITの経験はないが、今まで従事していた仕事で培った○○を武器に~」という姿勢を見せてくれる。
ここで問うているのは君の覚悟だよ、という意図を理解している。
そう、ここだ。
この人は自分に何を問うているのか、このシーンで何を言うべきか、これらを考えて言葉にしようと思うこと、実際にそうしてみること、それ自体が人間性であり「期待できる奴だ」ってこと、そう感じさせる奴だってこと。
もう1つは、「異業種転職するにあたって、どのような準備をされていますか?」という質問。
「えっ・・・、採用されたら頑張って覚えます」
はぁ~・・・・・・・・・・・・・
未経験の新しい仕事をします、下調べも準備もしてません、でも頑張るから採用してね、そりゃないだろう。
そんな風には思っていない!と思うかもしれない。
でも、そうとしか思えない言動なんだよ。少なくとも俺はそう判断する。
他にイケてない回答として、「独学でPythonを勉強しています」的な返し。
覚束ない手つきだけど一応コードを書くことはできるのか、変数や定数や型といった基礎概念はわかっているのか、何をどのように勉強して今どんなレベルなのか何一つわからない。
それらを伝えようする意思がない、という印象すら与える。
「500ステップ程度のプログラムを10本ほど作った」だとか定量的な返しであったり、電卓アプリでもWebサイトでもパッと見せられるようなものをタブレットなんかで見せてくれると好印象。
え、採用される確約もないのにそんな労力の前払いはしたくないって?
それは「採用されたとしても自分は頑張れない奴だ」って言っているようなもので、つまり覚悟がない、採用すべきじゃないってこと。相手にそう感じさせるってこと。
そういう意味ではwin-winだ。
だって、包丁を握ったこともないような奴をシェフ枠で採用するなんて話はないでしょ?
なにも難しい料理を作れるようになれなんて話じゃなくて、カレーでも親子丼でも実際に自分で作ってみて、いくらか料理という行為はしてみようよ。
お料理教室感覚で転職して、キャッキャウフフしながら肉じゃがでも作って、早く一人前の板前になれるといいなあ~的なアレか?お気楽か?ナメてんのか?
覚悟が伝わらないと、こんな風に伝わってしまいかねない。
おわりに
一部冒頭にも書いたが、心から伝えたいことがある。
まず、若い人たちに不幸になってほしくないこと。
今の仕事が嫌だからという逃避的な転職は、良い結果になりづらいこと。
若者には実力も実績もなく、若さ(将来性と人間性)しかないということ。
その若さは、年とともに失われていくこと、価値に気づくのは失ってからということ。
本気で転職を考えるなら、覚悟を持って臨んで欲しいこと。
その覚悟をカッチリ伝えてほしいこと。
豆粒会社ごときが長々とゴチャゴチャうるせえって?
そこは、すまん。
ただ、ウチみたいな豆粒会社でも気づいたり思ったりするポイントは、ちゃんとした会社や人気のある会社であるほど厳しく見られるであろうことは心の片隅に置いておいてほしい。
株式会社Exciter代表。アラフォー。釣りとSAPが好き。
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