2021年12月14日勉強会レポート 理論と感情の交差点について

社内勉強会

今回は、問題自体はシンプルなものの、直感的な答えと厳密な確立や計算に基づいて導かれた答えが異なる問題を挙げながら、理論と感情について学んだ。本レポートでは、問題の詳しい解説ではなく、何がポイントになるかを中心に述べたい。

 

モンティホール問題

(問題)

① プレイヤーの前にはA,B,Cの3つのドアがあり、その奥には当たりが1つ、ハズレが2つ用意されている。

② プレイヤーがドアを1つ選択する(この時点では開けない)。

③ モンティは正解のドアを把握しており、残された2つのうちハズレのドアを1つ開ける(2つともハズレの場合はランダム)。これはプレイヤーの回答に関わらず必ず行われ、そのことは予めプレイヤーも認識している。

④ ハズレのドアが1つ開いた後、プレイヤーに選択を変更するかを問いかける。

この場合、選択肢を変えた方が得か損か、または変わらないのか。

 

(答え)

選びなおした方が良い

最初からハズレを選ぶ確率の方が高く、ハズレの場合は選び直せば必ずアタリとなるため、選び直した方が得となる。

 

(ポイント)

この問題は3択という形式によって問題の本質を混同しやすくなっている。例えば100択だとわかりやすい。100択では明らかにハズレを引く確立の方が高いことが分かるが、3択という数字だと「実は同じ確率では…?」といった考えも引き起こされる。3択という少ない選択数であれば、細かい確立の計算をせずに1つ1つどういったパターンがあるかを考えるやり方でも答えが導ける。問題の形式に感情を揺さぶられることなく、理論的に問題を解く力が問われている。

 

1=0.99999…

(問題)

1=0.99999… は成立するのか

 

(答え)

正しい

1÷3=0.33333…であり、1÷3×3=0.99999…となる

 

(ポイント)

見た目・値が異なるという理由で等しくないと考えてしまいがちだが、計算式として見ると理論上は正しい結果となる。「納得いかない」という感情に支配されやすいが、何をしてもこの事実が覆ることはない。

つまり、その感情と事実を混同してはいけない。

このように「腹が立ったり納得いかなかったりするけど、正しい」ということはある。感情と正誤という観点を切り分けないと、いつまでも感情に支配されて正しい判断を見誤ることになる。

 

埋没原価

埋没原価とは、すでに発生したコストを指し、意思決定に加味すべきでないコストのことである。

特に仕事や損得においては埋没原価を加味して判断してはいけない。

しかし、埋没原価は特に人の感情や意思を強く揺さぶるものであり、全く考慮しないことは中々難しい。

問題なのは「埋没原価を加味して判断する」という行動よりも、それが損得<感情という判断であることを自覚していないことにある。

 

※なお、以下の解答は、あくまでも埋没原価を考慮した損得であるため、必ずしもその行動自体が間違いというわけではない。

 

映画館

(問題)

あなたは、久々に映画を見に映画館へ来た。しかし見始めて早々、とてつもなく映画がつまらないことがわかった。

あなたは損得を考え、見続けるべきか、帰るべきか。

 

(答え)

つまらない映画であれば帰るべき

 

(ポイント)

この場合の埋没原価は映画代であり、既に支払が済んでおり、意思決定に考慮すべきでない。

支払った映画代がもったいない!という理由は、埋没原価を考慮してしまっているため、誤った行動である。つまらない映画を見続けても得られるものはなく、支払済みの金が返ってくるわけではない。

 

ギャンブル

(問題)

あなたは競馬場に来ており、既に3万円負けている。次の最終レースで、これまで負けた分を取り返そうと、払い戻しが3万円以上となるように馬券を買おうと考えている。この考え方は正しいか間違いか

 

(解答)

間違っている

 

(ポイント)

この場合でいう埋没原価は、既に負けが確定した3万円である。

負けた3万円を取り戻すために馬券を買おうという考えは、埋没原価を考慮してしまっているため、誤った行動といえる。

あくまで「負けた分を取り返そう」という考え方に対する正誤であり、買う場合は最終レースにおけるベストな買い方をすれば良い。

 

試作品

(問題)

メーカーで新たな製品を売り出そうと方針ができ、試作品を製作し市場調査を行った。製品化すれば月に100万円程の利益を生み出せるとの判定から、投資を行うことにした。

この時、試作や市場調査に要した費用を製品化のコストや売値に含めるべきであるか、無関係と考えるか

 

(解答)

無関係。製品化のコストや売値に含めるべきではない

 

(ポイント)

この場合の埋没原価は、試作品の製作や市場調査に要したコスト。そもそも、試作や市場調査を行う際、行うか否かは予算感も踏まえ既に意思決定を行っている。

試作や市場調査にどれだけのコストを費やしていようとも、利益にならなければ製品化すべで気でないし、利益になると判断された場合は製品化すべきであるため、投資判断に考慮すべきでない。

 

まとめ

ほとんどの人が理論よりも感情を多く持っている。どの問題もスッキリしないように感じるのは、人間が理論のみで考え生きているわけではなく、何かしらの感情と共に生きているためである。そのため、理屈自体が正しくてもそこに感情が入ると違和感を覚える。

理論を振りかざされると、自分の誤りを認めざるを得なくなるという嫌悪感から、他人の意見が正しかろうが認めたくない気持ちになる。特に埋没原価は認めることが誤った意思決定をしたことの自認を意味し、自分の誤りを認めたくないプライドの高い人ほど間違った考え方をする傾向にある。仕事においてそのような考えは邪魔なものであり、正しいものは正しいと冷静に判断できる状態でいなければならない。

そして感情ばかり優先するとヒステリックな人間になり、対して理論を優先すると人としてあまり良い印象にはならない。10:0という振り分け方ではなく、シーンに応じて落としどころを決めていくことが重要である。自分が感情を優先した判断を下しているという事実をしっかり認識していることがポイントであり、何も分からずに感情に振り回されている人間にはなってはいけない。

 

生産的に動くためには感情は一番の妨げになるが、それは10:0で考えることではなく、以前の勉強会(議論のための10のルール)の通り、「議論」というシーンに重要であるということを改めて感じた。そして、どのシーンには感情より理論が大切か、それとも感情の方が大切なのか、という認識はなんとなくではなく言葉に表せるように鍛えていきたいと思う。

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