【自分には向いてなかった…】駐車場コールセンターアルバイト体験記

アルバイト

私は大学生時代、さまざまなアルバイトを転々とした経験がある。ここでは、発達障害傾向がある私にとって特に相性が悪かったアルバイトを取り上げ、それをいかに乗り越えようとしたかについて共有する。アルバイトを辞めたいほどしんどい人や、社会不適合者たちの参考になれば幸いである。

きっかけ

今回取り上げるアルバイトはコールセンター。コールセンターと一口に言っても様々な種類があると思うが、私がアルバイトをしたのは、コインパーキングなどの無人駐車場について顧客から利用方法の問い合わせを受けたり、顧客に起こったトラブルに対応したりする駐車場コールセンターであった。アルバイトを続けた期間は約1年間で、シフトは週2~3回程度で朝に3時間働いていた。時給は1300円で、コンビニバイトなどよりは若干いい。大学の先輩に誘われ、「能力に応じて時給を上げてもらえる制度もあるからおすすめ」と言われて漠然と応募してみた。面接に行くと、「1日研修を受けた後は実際に仕事をやりながら覚えていただきますが、いつから始められますか?」と言われ、すんなり採用された。

 

アルバイトを始めたての頃

 会社は私が通っていた大学の近く(都内某所)にあり、初日に事務所に行くと20名ほどのスタッフが電話対応にあたっていた。スタッフは社員や契約社員が7割、アルバイトが3割程度で、初日に私に対して研修をしてくれた男性はアルバイトだった。私はその人から50ページくらいの冊子を渡され、「ここに全パターンの対応方法があるのでこれから説明します」と言われた。そのコールセンターでは、受電の8割以上が無人駐車場で起きた何らかのトラブルに関する内容で、残りの2割が利用に関する問い合わせだった。駐車場トラブルにもいろいろ種類があり、まず無人駐車場の種類がゲート式(入り口にゲートがある)やロック板式(車の下に板がある)タイプなど様々で、それによって生じるトラブルは異なってくるし、駐車場の運営会社によっても対応方針が異なっていたりもする。それらの様々なトラブルについての対応方法を網羅したものが50ページのマニュアルになるわけだが、そこにはトラブルの名称が数十種類列挙されており、それぞれの中に駐車場タイプごとの対応方法が箇条書きで乱雑に書かれているのみだったため、理解するのが困難だった。さらに私は無人駐車場の仕組みや分類をよく理解していなかったので、男性が説明してくれた内容もよく頭に入ってこなかった。そんな状態で一通り口頭で説明を受けても、右から左といった状態で研修を終えてしまい、気づいた時には「では電話を取ってください」と言われて研修が終わってしまった。

何はともあれやらないといけないということで、かかってきた電話を取る。研修係の男性はしばらくの間は隣について何かあったら対応してくれることになっていたので、緊張はしたが安心感もあった。しばらくすると電話が鳴り、私は受話器をとった。この最初の客が曲者で、その初老と思わしき声の女性はゲート式駐車場の仕組みが分かっていないのか「駐車券を入れたのに出てこなくてお金を払えない」という意味不明な発言をしていた。ゲート式駐車場では入り口で出てきた駐車券を取り、出口で駐車券を入れて表示された料金を支払う仕組みなので、出口においては入れた駐車券が戻ってこないのは当たり前である。私は早速パニックに陥りそうだったが、落ち着いてひとまず状況を確認しようと思い、「今は出口のゲートにいらっしゃるということですね?」と聞いた。しかし「急いでんだから早くしてよ!この状況見れば分かるでしょ!」とキレられてしまった。出会って5秒でキレられたことに拍子抜けしてしまい、助けを求めて隣の研修係さんをチラリと見ると、「電話代わりますね」とすぐ察してくれて、その後3分くらいで問題が解決した。その女性は駐車券を入れたのに料金が「表示されない」という機械の故障について話していたということで、どんなに急かされてキレられても冷静に状況を聞いて対処しなければならないということを教えてもらった。

 

自分に向いていなかった要素が多かった

その後、徐々に仕事を覚え始めて安心できると思ったのも束の間、ここから私の適性のなさが露呈し始める。先ほども言ったように問い合わせの8割はトラブル対応であり、急いでいる状況でトラブルに巻き込まれた利用者はパニックや怒りとともに電話してくることが多い。私はただでさえ物事を処理する速度が遅く、視覚的イメージの能力が低いという特徴があるため(詳しくは私の不登校記事を参照)、対処の手順を考えるのも極めて遅く、利用者が経験している状況をうまく想像できないせいで勘違いしてしまうことも多かった。

それが焦ってイライラしている客にさらに油を注ぐ結果となってしまい、「上の者を出せ」と言われて社員さんに電話を代わってもらうことも度々あった。そうやって度々助けを求めると社員さんからも次第に呆れたような反応を返されるようになり、しんどかった。それに加え、職場環境の悪さも気になった。部長に当たる男性はアルバイトに対してはあまり厳しくすることはないが、多忙でストレスが溜まっているせいもあるのかミスをした社員を呼び出して事務所に響き渡るような大声で何度も怒鳴りつけていたりした。私は注意散漫でもあるため電話で対応していてもその怒鳴り声に注意が逸れてしまい、利用者の話を聞き逃して結局自分も利用者に怒られてしまうという事態も何度か発生した。

 

向いている要素もゼロではなかった?

ここまでで私は「もうアルバイトを辞めよう」という気持ちがかなり強くなっていた。そこでアルバイトを紹介してくれた先輩にそのことを相談すると「私たちどうせバイトだしもっと強気でやろうよ」と言われた。紹介してもらった恩もあるので、もう少し続けてみようと思った。それにしても、このまま続けると会社に迷惑が掛かるだけなので、過去に自分が犯したミスを思いつく限り洗い出して、減らす工夫を考えることにした。ミスの種類は大きく分けて2つで、1つは利用者のトラブル状況を把握する際に生じる勘違いの多さや対応の遅さ、2つ目はPC上のシステムに受電記録を記入する際のヌケモレに関すること。これらの2種類がほとんどを占めていた。1つ目のミスについては、視覚イメージが苦手な人間である私はとにかく現物を把握するしかないと思い、都内にある色々な無人駐車場を歩きながら見て回った。どういった形で料金の管理等をしているかを辞書的に網羅することによって、イメージが苦手でも断片的な情報から駐車場のタイプや状況をかなり想像しやすくなった。2つ目の、システムに記録を保存する際にヌケモレが生じてしまう理由として、普通の人はマルチタスクができるので電話口で相手の話を聞きながらシステムに打ち込んでいたが、私はマルチタスクが極端に苦手であるため、同じやり方だとミスを連発した。その代わりに聞いたことを単純に音声として記憶しておくことは得意だったため、あらかじめ入手すべき情報をリストアップした紙を目の前に掲示しておき、話を聞くときはその情報を記憶することだけに集中し、電話が終わってから一気に打ち込みをするようにした。間違いなく推奨されない方法ではあるが、私の場合はこの方法でミスが限りなく減少した。マルチタスクでなくなったことにより脳への負担が軽減したのか、職場に怒号が響いても利用者の話を聞き逃してしまうことがかなり減った。向いてないことだらけのこのアルバイトの中で、私が唯一向いていた部分は、自分の弱点を理解し克服するための努力ができたという部分だったと思う。

これらの対処を行った結果、アルバイトなので客観的な仕事の成績といった指標はないが、利用者に怒られたり社員の人たちに冷ややかな目を向けられたりすることはほとんどなくなった。仕事は順調だったが、1年続けたある日、私は当時大学で所属していたサークルで両足骨折をし数ヶ月実家に戻るハメになった。長期間シフトも入れないため、そのタイミングでアルバイトを辞めることにした。アルバイトが嫌だという理由ではなく円満に退職することができてよかったなあと思いながら社員さんに両足骨折について事情を話し、「辞めます」と伝えると、「なんでそんな分かりやすい嘘つくんだお前はバカか!」と怒鳴られた。私はこのアルバイトで最初から最後まで怒鳴られる運命だったんだなと思った。

コールセンターのバイトといっても色々だとは思うが、私が経験したアルバイトのようにクレーム対応的な仕事は少なからず皆ギスギスしているので、強メンタルの人じゃなければ辞めておいた方がいいかと思います。

 

苦手なことをする上で大切だと学んだこと


苦手なアルバイトでも諦めずに自分なりに続けたことによって、いくつか気づけたことがあった。まず、漠然とできないと思っていることをそのままにせず、つまずく要素をはっきりさせることが大切であるということだ。「作業の手順を忘れるからTodoリストを作ろう」みたいに安直に解決策にかじりついても根本的な解決にならない。例えばADHD傾向のある人は、Todoリストを作っても毎回見るのが面倒で、結局見ないで作業してミスするようになってしまうかも知れない。そういうときは作業に必要なものを順番に手にできるようあらかじめ配置を変えておくとか、そういった自分のつまずく要素に直接アプローチするような方法を考えなければならない。
また、特定の能力が著しく低くてつまづいてしまう私のような人は、一般的に人がお勧めする対処方法がフィットしないことが多い。皆と比較してできないことが多いと焦ってしまうと思うが、やり方を変えると意外と突然に活路が開けることも多いので自分の特性をよく理解して対処方法を探してみてほしい。
最後に、より良い方法を試行錯誤し続けることは大切だがどんなにやっても無理なものは無理、という場合もある。万策尽きた状態で自分を責め続けるのは辛いので、考えうる方法をあれこれ試しても無理だったりしんどくなったりするくらいだったら体や心を壊す前に辞めた方が良いと思う。

 

感想とまとめ

今回の経験を通して、メンタル激弱な人間だった私だったが、諦めずに仕事のやり方を工夫してみることで、明らかに向いていないと思ったことでもやり方次第で対処可能な範囲があるということを知ることができた。今後も何かをやるとき漠然と向いてないと思いながら続けるのでなく、自分なりに色々な方法を模索してみたいと思う。

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