【ビッグフットを探しに行くだけだと思ったのに…】アメリカ人からの脱出体験記

海外

※この記事は一部の方のトラウマを喚起する可能性があります。過去に人から強い恐怖を与えられた経験のある方、またその手の話題が苦手な方は閲覧しないことをお勧めします。

これから話すのは、私が大学3年生の夏に経験した恐怖体験である。一言断っておくが、こんなタイトルだけどアメリカ人全般に対する悪意は全く無く、純粋な経験を言葉で表現するとこうなっただけである。

 

アメリカに行くことになったきっかけ

私はもともとアウトドアが好きで、大学でも色々なところに出かけるサークルに入っていた。しかし大学3年生で足を怪我してしまい、それからしばらくサークル活動はできなかった。どうせ活動できないなら、バイトをしまくったお金で海外旅行をしようと思い立った。しかし、ただの旅行ではつまらない。現地人と交流したい。そう思ってネット検索していた時、「workaway」というwebサイトを見つけた。これはワーホリのタダ働き版みたいなもので、海外の色々な国において、労働する代わりに現地人がお家に泊めてくれるという、貧乏学生には大変ありがたいシステムだった。

早速迷わずに登録してみると、楽しそうな案件がちらほらと見つかる。泊めてもらう対価としての労働なので、ハードすぎるものはなく、ペンキ塗りだったり、大掃除程度の依頼が多い。今思えば、この時点で「ベリーを摘むの手伝ってください」みたいな健全な求人をチョイスしておけば助かっただろう。しかし、私が見つけたのはアメリカ・カリフォルニア州での募集で「ビッグフットを一緒に探してください」というタイトルのものだった。その求人を開くと、屈強なそうな白人中年男性がラテン系のお姉さん2人とニコニコしている写真と簡単な説明文が載っていた。私には、意味不明なものに食いついてしまう悪癖があるのだが、このくらいの年齢になると、よく分からないものは意外と中身がなくて、本当に興味深いものとは異なるのだということを少しずつ学んできていた。なんだこれ、変なの。誰がこんな意味不明な人についていこうと思うんだろう。問い合わせ欄にも誰もコメントを書いてない。どう考えても不審者じゃん。

いや、やっぱり面白い。

ということで、私はすぐ連絡を取った。テンポよくやりとりが進み、「8月に数週間、Sierra国立公園あたりでキャンプしながらビッグフットを探そう」という話に決まった。最初は他にも来る人がいるという話だったが、結局2人だけでキャンプをすることになった。この時点で危ないんじゃないかと思っている人は正常で、私も危険な目に合う可能性は何度も考えたし、恐怖心は人より強い方だと自覚している。かなりの葛藤があったが、それでも最後には衝動性の方が勝ってしまった。さすがに家族には念入りに説明し、遺書を部屋の引き出しにしたためて、ロサンゼルス行きの航空券を予約した。

 

いざアメリカへ~キャンプの始まり~

結論から言うと、現地でのキャンプ自体は何の問題もなく終わった。MacのOSにHigh Sierraというバージョンがあったが、キャンプをしたSierra国立公園の土地はその名の通り標高が高く、台地状になっていた。広大かつ遮蔽物がないのでかなり遠くまで見通しが効くが、見渡す限りは誰も見当たらないような空間だった。そんな場所に私たちのキャンプ地がポツンとあった。誰もいない場所を散策し、名もなき山に登ったり、星をずっと眺めたり、良い暮らしだった。ビックフットを探すという名目はどこへやらではあるが。ある時は、ふと携帯したクマスプレーが本当に発動するか不安になって、試し撃ちしたらその瞬間に逆風が吹いてきたこともあった。ペットボトルの水を握りしめて顔にぶっかけ、30分以上のたうちまわった。

山を登って見つけた二つの湖

 

 

 

恐怖体験の始まり

こんな愛おしいような紆余曲折があったというにも関わらず、終わりよければ全てよしが実現されなかったのが、このキャンプの残念なところである。無事キャンプを終えた後、そのアメリカ人宅に帰還してから一悶着あった。彼の論理を婉曲的に伝えると「2人だけでキャンプにまで行ったということはそういうことだよね」という話である。この、「着いていく女さんが悪い」理論は日本の至るところに散見されるが、この時、世界共通なのかもしれないと思った。その時から、彼の態度は突然かなり露骨に変わった。私はこれまでほのかにしか漂っていなかった恐怖が現実味を帯びてきた感じがした。恐怖を感じながらも、彼に色々言われるうちに論理にも一理ある気がしてきて(そもそも私の英語力が足りず何を言い返しても言い返された)、最終的に「本当にごめんなさい。もう出て行きます」というのが精一杯だった。彼は「夜は危ないから、明日の朝に出ていけ」とピシャリと言い放つと、スタスタとリビングに行って電気を消し、突然暗闇の中でテレビを付けてゲラゲラ笑い始めた。何だこれは。めちゃくちゃに怖い。今思えば普通に好きなコメディ番組とか観て笑っていたのだろうけど、恐怖フィルターがかかった私には、この豹変ぶりだとレクター博士(※映画「羊たちの沈黙」の殺人鬼)みたいに脳みそ切り開いて食われるんじゃないかという、そのくらいの勢いが感じられた。玄関はリビングと繋がっているので玄関からは出られない。そこで仕方なく私は自分の部屋の窓からこっそり脱出することを決意した。

 

事件現場 : 中央の大きな窓は開かず、左手にある小さな窓から出ないといけなかった。(その窓が写っている写真がないのでこれで許してください)

 

脱出作戦決行

脱出は難しくなかった。ただ、窓の位置が高い上に、足場となる椅子もなかったため、持ってきたザックに細引を括り付け、自分がまずよじ登って外に出てから細引きを引っ張ってザックを回収した。この時初めてアウトドアサークルに入って良かったと感じた。恐怖でパニックになっていたため、何も考えずに脱出してしまったのはいいが、その後どうするか困った。夜19時ごろだった気がするが、日没が遅いので辺りはまだ明るかった。その人の家は田舎にあったので、なかなかホテルが見つからなかったが、幸いAirbnb(民泊の予約サイト)で宿を見つけることに成功した。結構歩いて辿り着き、ひと段落できたのが10時ごろ。スマホを見ると、例のアメリカ人から連絡が来ていた。怖いし無視しよう、と思ってメッセージアプリを開いたら「お金半分返してください。キャンプ費用は折半の約束です」とのこと。やってしまった。圧倒的な論理的正しさ。私はパニックになりすぎたせいで、彼に半額を返すのを忘れて脱出してしまったのだ。偏見かもしれないが、アメリカでは気軽に裁判を起こすという話を聞いていた私は、ここで約束を破って逃げたりしたらこっちが訴えられるかもしれないと思い、「明日朝お金だけ返しに行きます」と言った。(今になれば小切手で送るという手があったと思うが、とにかくこの時はパニックだったので(以下略))

翌朝、アメリカ人の家の玄関にやってきた。私が恐怖に怯え一歩引いて待っていると、彼が出てきた。私は若干多めにお金をバサっと渡して、震える声で「Bye」と言った。彼は、もう二度とお前とは会わないという決意が感じられる威勢のいい声で、「Good Bye!」と言い放った。その声にはOfficial髭男dism以上のdandyismを感じた。というのは嘘です。

 

最後に

意味不明な経緯から始まって意味不明な出来事が起こる話をこんなにだらだらと語ってしまいましたが、結局「知らない人についていくのは危険です」という話でした。

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