2022/3/23に行った勉強会「内部統制について」のレポートと感想である。
会社の事業活動を適切かつ適法に行うため、内部統制は欠かせない仕組みである。そこで、今回の勉強会では、内部統制についての知識を勉強した。
内部統制とは
内部統制とは組織の業務の適正を確保するための体制を構築してく制度である。そういった制度は企業のみならず、区役所や地方裁判所などの政府機関が含まれる組織も対象となる。このレポートでは、主に企業を対象として説明する。
日本における内部統制制度
2006年6月に国会で成立した金融商品取引法(日本版のSOX法)によって、内部統制制度が導入された。内部統制制度は4つの目的と6つの基本的要素で構成されている。では、その4つの目的と6つの基本的要素を紹介する。
4つの目的
①業務の有効性・効率性
事業活動の目標達成のため、業務の有効性及び効率性を高めること。
②財務報告の信頼性
開示する財務諸表と財務諸表に重要な影響をおよぼす可能性がある情報について、その信頼性を担保すること。
③法令遵守
事業活動に関わる法令や会計基準もしくは規範、各社の倫理綱領やガイドラインを遵守させること。
④資産の保全
会社の資産(有形・無形、人的資源も含む)の取得やその使用、処分が正当な手続きや承認のもとで適切に行われるように資産の保全を図ること。
6つの基本的要素
①統制環境
社風を決定し、統制に対する組織内のすべての者の意識に影響を与えるとともに、他の基本的要素の基礎をなし、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング及びITへの対応に及ぼす基盤をいう。
②リスクの対応と評価
リスクの評価とは、事業目的の達成を妨げる可能性がある事柄を識別し、分析および評価すること。リスクへの対応とは、リスクの評価を受けて、当該リスクへの適切な対応を選択するプロセスをいう。
③統制活動
経営者の命令及び指示が適切に実行されることを確保するために定められる方針及び手続きをいう。そして、方針や手続きのみならず、作業に関し、実行者、最終責任者を明確にしなくてはならない。
④情報と伝達
必要な情報が識別、把握及び処理され、組織内外及び関係者相互に正しく伝えられることを確保すること。「コミュニケーションのルール」とも言える。
⑤モニタリング
内部統制が有効に機能していることを継続的に評価するプロセス(内部監査や外部監査において監査側が統制活動を監査するためのサンプルの採取がスムーズに行なえるかどうかが焦点になる)をいう。例えば、「統制活動」と「情報と伝達」はよく監査の対象となる。
⑥ITへの対応
内部統制に利用するITの開発やメンテナンスの実施、またアクセス権限の管理を行うこと。例えば、現代企業では、会計プロセスにITが介在しているので、そのプロセスの正当性を証明するため、ITの開発、運用プロセスが厳格に行われていることを保証しなくてはならない。よって、不正会計を予防するために、ITの保守・管理部門により行なわれる財務関連の元データ情報の更新に関して、更新履歴を正確に記録することが必要である。
内部統制の意義
では、なぜ企業は「内部統制」ということを重視しなくてはならないのか。これから説明する。
◆株式市場の紹介
まず、背景資料として、株式市場の仕組みを理解したほうがいいと思う。
起業者があるビジネスとして成り立つため、資金が必要となる。それによって、株式市場でより多くの資金が貰えるのは資金調達手段の一つだ。
株式市場には投資者が存在する。投資者は自らの判断によって、将来性がある企業の株を買う。それと当時に、株が買われる企業の株主として、株主総会に参加して議決に加わる議決権、会社が解散する際に、残余財産分配請求権、そして、会社が得た利益の一部の配当金を受け取る利益配当請求権といった三つの権利を有する。一方、起業者は雇われる社長のように、株主からもらった資金を適切に使用して、一生懸命に企業の利益を上げないといけない。その後、出資金の割合によって、株主に配当金を支払う。
市場の原理によって、財・サービスの価格は需要と供給に応じて、変動している。株式市場で売買されている株もその特徴がある。例えば、ある企業の経営が好調の時、この企業の株を買ったら、もっと多くの配当金が獲得できるので、株が欲しい投資者も多くなって、株価もどんどん高くなる。逆に、企業の業績が悪くなった際に、その企業の株を保有している投資者は損をしたくないため、株を売却する。それと共に、この企業の株価も下落する。
◆会社の不正及び影響
株式市場の仕組みから見て、企業は確実に成長しないと、投資者から資金がもらえないという結論を出せる。しかし、世の中にはもっと多くの投資を獲得するため、嘘をついている企業もたくさんあると思われる。
例えば、アメリカのエンロン事件は代表例である。世界最大手のエネルギー販売会社だったエンロンは、相次ぐ海外の大規模事業の失敗などで実際には経営状況が悪化しているにも関わらず、CFO(最高財務責任者)の指示で不正な会計処理をして偽の財務報告をしていた。エンロンの粉飾決算疑惑が発覚した後、株価が暴落してしまった。そして、倒産により、多くの株主が資産を失い、従業員2万人以上が職を失った。そのため、2002年に、アメリカで「上場企業会計改革および投資家保護法」(SOX法)が制定された。この法律は、日本版SOX法の制定にも影響を与えたと言われた。
内部統制の4つの限界
内部統制を構築し、運用していくことによって、会社の信用が向上できるが、4つの限界が存在している。
①経営者が不当な目的の為に内部統制を無視あるいは無効とすることがある。例えば、社長自体が不正をする際に、防ぐ体制が整えられていない状態である。
②判断の誤り、不注意、複数の担当者による共謀によって有効に機能しなくなる場合がある。例を挙げると、日本の場合は、外部監査法人と企業は微妙な顧客関係にあるので、共謀で不正をすれば、発見されにくくなってしまう。もしくは、会社内の経理部門で粉飾決算をするため、実行者と承認者が意図的に監査を避けたら、問題となる。
③当初想定していなかった組織内外の環境の変化や非定型的な取引等には、必ずしも対応しない場合がある。ビジネスの発展が非常に速いので、既存の内部統制制度が如何に新しい環境に適合するか、企業にとっては課題だと思われる。
④内部統制の整備及び運用に際しては、費用と便益と比較衡量が求められる。ここでは、6つの基本的要素の「ITへの対応」の事例で説明したいと思う。そもそも、粉飾決算などの不正事件を防止するため、最も有効な手段はITシステムを利用することだと思われる。しかし、企業にとってはITシステムを導入する時、膨大な費用が発生するかもしれない。そこで、会社側はコストと便益を考えれば、内部統制制度を構築する際に、時々適切な答えを選べないことも事実である。
感想
確かに、内部統制という制度は限界が存在している。しかし、以上に述べた通り、信用が失われた企業はビジネスの世界で生存できない。そして、上場企業が粉飾決算といったような不祥事が起きたら、投資者の株式市場に対する評価も下がる恐れがある。これは金融市場全体の発展にとっても、非常に不利なことだ。つまり、信頼がなければ、ビジネスの世界も成り立たない。また、エンロンといったような大手企業が内部統制をしっかりしていなかったら、従業員や株主のみならず、取引先や債権者などの全てのステークホルダーにも悪影響を及ぼすこととなる。
そのため、会社側にとって、起業したばかりの中小企業であれ、既に上場した大手企業であれ、「内部統制」ということを大切にしなければならない。また、私たち一般市民も、従業員として会社で日常の業務を遂行する際に、法令遵守の意識を高めることも重要だと思う。
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