はじめに
この記事では、点字について自分が経験してきたことや、点字の概要をご紹介します。
次の記事では、実際の点字の読み方をレクチャーしていますので、そちらもぜひご覧ください!

習得時期
義務教育期間である中学生の時に習いました。
授業内容としては、点字を打つ簡易キットが配られ、紙をセットして鉛筆などで紙の指定場所を押し込むと紙に凹凸ができて点字が打てる、というようなものを使った授業でした。
そこで鮮明に覚えているのが、点字を打った後の紙面の裏にできる凹凸を触るのが好きだったということです。
そのおかげで授業内容をしっかりと覚えていたのかなと思います。
実際に役に立った話
2019年3月29日、自分は21歳のときでした。登録していた派遣会社から一つのこんなメールが届きました。
From 〇〇派遣会社 |
To 自分 |
本文
いつもお世話になっております。 〇〇派遣会社でございます。 〈〇〇市選挙事務 当日業務 (点字対応)〉 の募集でございます。 【募集内容】 ・開票事務補助:前回の選挙の実績として、最大50票程度の点字投票用紙の候補者名を判別して、付箋を貼っていただく業務です。 |
正直このメールを見た時に給料を間違えているのではないか?と思いましたが、一度聞いてみようと思い、メールへの返信をしたところ本当に内容は間違ってなかった様で、時給6,000円でした。
そんなにうまい話があるのか?と思いましたが、チャンスだとも思い応募することにしました。点字能力で仕事ができるなんて思っても見なかったので本当に驚きました。
本来、点字は視覚障害者とのコミュニケーションの手段です。
ですが、このような形で活用できたことは棚からぼた餅でした。
結果的に1時間30分、深夜割増で合計13,500円、点字の能力があるだけでこれだけ稼ぐ事ができました。
限定的ではありますが、仕事において点字には高い価値があるのだと思いました。
点字とは
点字は、視覚に障害のある方々が触って読む文字です。
みなさんが目で文字を読んで、色々なことを知ったり、伝えたりするのと同じように、点字は見えない、見えにくい人にとって大切な文字です。
点字の歴史
点字はフランスが発祥です。
元々軍人用として、夜間でも触覚だけで読める暗号用文字として使っていたものを、1825年、パリ訓盲院の教師だったルイ・ブライユ(1809~1852)が視覚障害者用の文字として改良し、現在の6点点字を考案しました。
この点字は、1854年にフランスで正式に採用され、現在では世界中で翻案され使われるようになりました。
英語圏では点字を考案したルイ・ブライユに準えてBraille(ブレイル)と呼ばれています。
日本の点字の「始まり」は?
現在日本で使用されている日本語の点字は、フランスで採用されたものを石川倉次(1859〜1944)が翻案しました。
これは、1890年(明治23年)11月1日に東京盲唖学校内の点字選定会で正式に採用されました。
点字は世界共通?
結論から言うと共通ではありません。点を6つ打つと言う条件においては共通しているのですが、国によって同じ点字の型でも違う言葉になってしまいます。
世界各国によって言語が違うように点字も国で使われている言語によって変わってきます。
※これより以降は点字を【日本の点字】として紹介していきます。
点字の特徴
6つの点の組み合わせでできている
6点の組み合わせで、仮名、数字、アルファベット、それに各種の記号類も表しています。
1点でも違うと全く異なった文字になってしまいます。
触れたところしか認識できない
墨字は視野に入る何文字かを同時に認識することができますが、点字は指先に触れたところしか認識できません。
※墨字とは点字以外の文字を指します。
すべて横書き
墨字は横書きと縦書きを使い分けることができますが、点字はすべて横書きで記述しなければならないルールです。
変化が無い文字
墨字は文字の大きさや字体を変えられる特徴がありますが、点字は文字の大きさや字体が一定で変化がありません。
当然のことですが、視覚的には動きや勢いなどは全く有りません。
仮名文字体系
墨字は漢字仮名交じり体系ですが、点字は仮名文字体系です。
表音文字なので「ひらがな」「カタカナ」の区別がありません。
そのため、内容を誤解されないように語の区切りを明らかにする意味で「分かち書き」をして書きます。
※「分かち書き」とは、/の箇所を一マスあけて文章を書く点字独特の表記手法
(例)
あしたはあさからとてもてんきがいい。【ベタ書き】
あしたは/あさから/とても/てんきが/いい。【分かち書き】
点字の意義
点字は、文字の読み書き、読書、学習、コミュニケーションの手段として用いられています。
さらに、選挙の際の点字投票や点字による請願署名、資格取得や進学・就職などのための点字受験など、視覚障害者にとっては、欠かすことはできない文字となっております。
一方で、点字を使用している視覚障害者が少なくなっているというのも事実です。
身体障害者手帳保持者のうち、1割程度という統計もでています。
特に高齢で中途失明された方にとっては、点字を習得することは非常に難しく、利用が少ない一因となっています。
また、ITやインターネットなどの進化により,ネットラジオやオーディオブックなどの音声媒体で、情報を取得することができるようになり、情報取得手段の選択肢が増えました。
特に中途で失明された方にとっては、耳で聞くだけで利用しやすい音声媒体を利用するのは自然な流れかもしれません。
しかし、点字は一度習得することで、個々のペースで文字の読み書きができるので、知識を構築したり、考えを整理したりする上で、非常に優れています。
音はその場で消えてしまいますが、点字は幾度となく自分のペースで確認することができ、確実に自分の知識に蓄積できる強みがあります。
現在、点字本などは主にパソコンの点訳ソフトによって作成され、点字データとして活用されています。
その活用方法は、点字プリンターで紙に出力して利用するだけではなく、パソコン上で視覚障害者用の音声読み上げソフトを用いて、音で聞くなど、点字ディスプレイ等の機器で、幅広く利用されています。
このように点字は、コンピュータによる点字と墨字との相互変換により、効率性に加えて、共通性でも優れた文字であり、時と場面によって、情報の利活用が格段に高まります。
次の記事では、実際の点字の読み方をご紹介して行きます。

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