日常生活において、怒ったり怒られたりすることはよくあることだ。特に若手のうちは怒られる機会の方が圧倒的に多いだろう。しかし、なぜ人が怒るのか分からなければ、怒られたときにただ反発心を抱いたり落ち込んだりするだけで、何も得られずに終わってしまう。
怒られたことを成長に繋げるために、そして怒る立場になったときにも失敗しないために、「怒る」や「怒られる」ことへの理解を深めることは大切だ。
そこで今回は、人が怒る理由や、自分が怒ったり怒られたりする際の注意点について説明する。
怒る理由と怒らない理由
人が怒るときには必ず理由がある。逆に怒らない場合も、同様に理由がある。
怒る理由
改善してほしいから
出来が良くない人を改善させるために怒ることがある。たとえば同じ時間で他の人が10の仕事ができるところを、Aさんが7しか出来なかったら、当然上司からするとAさんは怒る対象になる。
この状態だと周りより仕事が出来ないAさん本人が不幸なだけではない。Aさんの上司や、同じ給料しか貰えない同僚も、みんなAさんのせいでイライラしてしまう。もし怒ることでAさんが10出来るようになったらみんなハッピーになる。
被害を受けたから
約束を破られたときなど、誰かの行動のせいで迷惑をかけられた人は当然怒る。迷惑をかけた側の人間が事の重大さに気付いていないこともあるので、怒るという明確な意思表示をすることで気付かせることができる。
ストレスをぶつけている
八つ当たりがこれにあたる。大して怒ることでもないが、ストレスによりつい怒ってしまう場合がある。
特に理由はない
もともと怒りっぽい性格であったり、たまたま機嫌が悪いタイミングだったり、というだけで特に理由はなく怒ってしまう場合がある。
改善してほしいから、被害を受けたから、の理由で怒られているのであれば、自分の成長に繋がるためむしろありがたいことだと考えた方がよい。なぜなら、自分を改善するきっかけを与えてくれているということだからだ。
もしストレスをぶつけている、特に理由はない、の理由であれば、ただの理不尽であるため、まともに「受け止める」という必要はなく、「受け流す」べき。
怒らない理由
見守っている
大人が子供同士の喧嘩を見守るように、その人のことを見守っているからこそ怒らないことがある。これは決して怒られる理由がないわけではなく、本人に気づきを得てほしい、失敗から学んでほしいという意図があってあえて怒らない。その上、いざ本当に危ない失敗をしそうなときは止めに入ったり手助けをしたりしてくれる。
親でもない人が見守ってくれている、という状況は滅多になく、もし自分のことを気にかけ、見守ってくれている人がいるのであれば、本当にありがたいことだと感謝すべきである。
タイミング待ち
まだ怒っていないというだけで、リミットを超えたら怒りが爆発するケースがある。また、「今はその時でない」だけでいつ訪れてもおかしくないため、怒られていないから大丈夫とは考えるべきでない。
怒る側としては、いちいち怒ってしまうのもよくないためその場は我慢というケースはよくあるが、その場で言わずに時間が経ってから急に怒りだすため、怒られた側は即時性がないため何にたいして怒られているのかぼやけてしまう或いは分からない、ということが起こる。
興味がない
自分には影響がない場合など、相手に興味がなければ怒らない。また、例えば他部署の若手社員がミスをしている場合、自分が口を出さない方が良いと判断したという場合もある。
この場合は無害ではあるが、味方ではない。できることならば「見守っている」のように味方になってほしいところである。
見殺し
自分が見放されてしまったり、嫌われてしまったりしたときに、失敗を心待ちにしているために怒らない場合がある。
もちろんすべての人に好かれることは難しく、また意識すべきでないが、嫌悪や悪意を持たれてしまった場合に、しばしばみられるケース。
敵を作らないことは不可能だが、無駄に敵を増やさない対応の仕方を知っておくことが大切である。とはいっても難しいことではなく、指示はきっちりこなす、余計なことは言わないなど簡単ではあるが日々の積み重ねが重要かと思う。
怒らない場合にも様々な理由がある。怒られていないから自分は順調だ、誰にも迷惑はかけていない、と思ってしまうと痛い目をみるかもしれない。常に自分の言動を省みるとともに、周りの人が自分をどう見ているのかを考えてみることが重要だ。
注意点
怒るときの注意点
誰かに怒る時には、押さえておくべき注意点がある。相手との関係を大切にしたい場合、相手のためを思って怒る場合であれば意識しよう。
正当な理由以外では怒らない
正当な理由とは、具体的には改善してほしい場合、実害がある場合、将来的な被害が見込まれる場合である。これらの理由もなしに怒ってしまうと、相手をただ嫌な気持ちにさせるだけで、何もプラスの効果がない。もしストレスをぶつけたり、理由もなく怒ったりすれば、自分も相手に同じことをやり返されるほど恨みを買うという覚悟が要る。
先に意図を伝える
なぜ怒られているか?を示さないと怒られる側も困惑してしまい、しまいにはイライラして逆ギレしてきたり聞く気をなくしたりする。先に意図を伝えることで怒られる側も素直に聞く体制になり、成長や改善を期待しやすくなる。
レトリカルクエスチョンをしない
レトリカルクエスチョンとは、「何で〇〇なの?」と文法上は疑問文ではあるが、実際は詰めているだけの文章のことを指す。質問の答えが聞きたいのではなく遠回しに攻撃しているだけなので、直接指摘するよりもずっと性格が悪い詰め方である。相手を不快にさせるには効果的だが、素直に言っていることを聞き入れてもらいたいなら避けるべき。
原則10分以内
説教が長いと怒られる側も疲れてしまい、素直に聞いてくれなくなってしまう。
最悪ストレスをぶつけてしまった場合でも、短ければそうとバレないこともあるし、仲直りもしやすい。逆に単なるストレスの怒りを1時間ぶつけ続けてしまうと、引っ込みがつかなくなり、仲直りはとてもしづらくなってしまう。
怒られるときの注意点
なぜを考える
怒る側も意図を伝えるべきではあるが、実際には伝えてくれない人も多い。また、怒っている人に「なんで怒っているの?」なんて聞いてしまうと火に油を注ぐだけなので、なぜ怒られているのかは自ら考える必要がある。
行動と気持ちのどちらで怒られているのか考える
仕事でのミスを怒られているのか、ミスを起こさないような注意を怠った姿勢そのものが問題なのかを勘違いしがちである。
たとえばシステムに誤入力をして怒られた時の理由を考えてみよう。もちろん誤入力そのものも良くはない。しかしそれよりもボーッとしたまま入力してしまったり、間違いがないかを最後に確認しなかったりした姿勢そのものを問題視して怒られているケースの方が多いのではないのだろうか。
このような場合に「何でこの程度のミスで怒られなきゃいけないの?」と思ってしまう人は、その裏のマインド面に問題があることに気付けないため成長できない。
自分のせいじゃない、と思わない
たとえば会社の人間が問題を起こすと、その問題には全く関係ないはずの人も「同じ会社の人だから」というだけで責められてしまうことがある。しかしこれを「自分は関係ないのに…」と思わない方が良い。
たしかに関係ない件で責められてしまうとモヤモヤするかもしれない。しかし同じ看板を背負った人がやらかしたら、1%でも関係者である以上は仕方ない。逆に問題の被害者や外部の人間からは、正直同じ会社の人間であれば一括りにしか見えない。自分のせいじゃないのに…と強く思い続けたとしても辛い思いをするだけなので、ある程度の責任はついてまわるものだと割り切る方が良い。
また「自分は関係ないし」というスタンスをとり続けていると、真っ当な理由で怒られている場合でも、周りのせいにする癖がついてしまう。これは自分を改善する機会を逃すだけでなく、周りからの信頼を失うことになるので、常に「自分に何かできることはなかったのか?」と振り返ることが大切である。
怒られた後の注意点
怒られた後にも注意すべきことがある。それは「怒られたくない」ということをモチベーションに行動するのは良くない、ということである。怒られないことを目的にしてしまうと、怒られることからの逃避が優先事項となってしまい、自分の頭で考えなくなってしまうため成長できなくなってしまう。
そもそもストレスをぶつけたり、理由なく怒る人がいたりする以上、怒られること自体を100%回避することは不可能なので、「怒られたくない」をモチベーションにするのはやめた方がよい。
まとめ
怒られることを好む人は少ないだろう。しかし実際にはその人のためを思って怒ってくれている場合だってあるし、痛い目をみてほしいからこそ怒らないという場合もある。怒られたからダメ、怒られていないからOKということではなく、なぜ怒られるのか、あるいは怒られないのかを自分の頭で考えることが重要である。
感想
今回のテーマは来年から社会人の自分にはとても大事な内容だと思った。今までは怒ってくれる人が身近にいることが多かったが、これからは自分のためを思って怒ってくれる人と出会えることはそうないと思う。そういった人との出会いを大切にしつつ、自分の力で成長できるように頭を使わないといけないなと思った。
また、今は怒られる側の方が多いが、将来的には誰かを怒る立場になることもありうると思う。いざ自分が怒るような状況になった場合に状況を良い方向にもっていく怒り方ができるよう、若手のうちから意識する必要があると感じた。
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