ほとんどの社会人は何かしらの組織の一員として、「仕事」という役割を果たすことで生活している。しかし、社会人経験が少ない若手は組織の一員として、特に一番下っ端の立場としてどのような行動が求められるかになかなか気づけない。そこで今回は組織論の基礎となる部分について解説する。組織論の基礎を理解することで、組織の中で良好な人間関係を築きながら円滑に仕事を進められるようにしよう。
組織論の基礎
組織について若手が理解すべきこと、勘違いしがちなことについて説明する。
現実を知ろう
みんな好きなことだけをしていたいし、嫌なことはしたくない。しかし組織に属している以上は、誰かに指図されることや組織の雰囲気や文化に気を遣うことを避けられない。そのようなことをしたくなければ、起業して組織のトップになるか、組織に属さないフリーランスになるしかない。
ではなぜみんな起業独立をしないのか。それは起業独立できるだけの実力がないからである。ほとんどの人は起業独立なんてしたくてもできない。だから就職活動や転職活動では、こちら側からお願いをして会社に入れてもらい働くことになる。そうなると会社のやり方やカルチャーに合わせたり、苦手な人とも関わったりしながらやっていくしかない。お願いして会社で働かせてもらっている以上は、自分の好きなようにはなかなか出来ないというのが現実である。
「自分の仕事」って?
組織に属す以上、その一員として割り振られた役割(たとえば資料を作ることや、プログラムを書くなど)を果たすことは当然のことである。では、それ以外のことはしなくていいと考えていたとしたら、それは完全に勘違いである。
組織には「誰の役割か明確に決まっていない」が、「組織を維持・成長させるためには不可欠」なことがたくさんある。ちょっとした掃除やコピー用紙の補充など、誰がやるかなんて決まっていないが、誰かやらないと組織が回らない。また周りの人とうまくやったり会社の行事に参加したりすることも、組織に属して生活していく以上はどうしても必要になってくる。このようなことを「自分の業務範囲外だから」と避けつづけていると、当然組織に居場所はなくなっていく。実力もない若手が組織内で居場所もなくなると、相当なハードモードになる。
面白い仕事なんてない
前提として、面白い仕事は世の中にそんなに多くない。そして、特に実力がない人が頭を下げて会社で働かせてもらっているという状況で、面白い仕事がまわってくるなんて、そんな都合の良い話はない。仕事がつまらないからという理由で会社を辞める若者も多いが、実力がない状態で他の会社に行ったところで、また同じようなつまらない仕事をするだけになってしまう。
起業・独立すれば解決?
以上に挙げたように、組織に属するということはその分面倒な仕事やストレスを引き受けるということである。そこから逃れるためには起業・独立する以外にない。しかし、そんなに組織に属すことが大変ならもう起業しよう、独立しよう、といって起業・独立をした人はほとんど失敗しているのが現実のようである。
なぜなら起業・独立をすると、嫌なことから逃げたいという気持ちだけでは耐えられないような大変なこと、面倒なこと、嫌なことが山ほどあるからである。このようなことは会社員のうちは想像もつかないため、起業・独立の良い面ばかりに目が行きがちになってしまう。しかし起業・独立をするということは必要な仕事や事務手続きも全部自分が責任をもってやるということであり、誰も守ってくれない。また、会社のブランドもないため自分の実力だけで評価されるということになる。このようなことを覚悟せずに起業や独立をして成功することはできない。
組織の中で生きる上で大切なこと
以上を踏まえたうえで、組織で生きていくためにはどうすればよいのかについて解説する。この内容は組織に属する人全員にとって重要な話だが、実力がない若手にとっては特に重要である。
将来性を測られる
日本は新卒・中途問わずポテンシャル採用であることがほとんどである。つまり、「今何ができるか」よりも「将来的に期待できるか」を重視されている。そのため現時点で知らないことや出来ないことが多少あっても大きなマイナス評価にはならない。
ではどうなるとマイナス評価になるかというと、将来性に期待ができないと判断されたときには大きなマイナス評価になる。本人に悪気がなくても、遅刻、忘れ物、同じミスを繰り返すなどのように、やる気がない、集中していないと判断される行動をしてしまうと将来性なしと判断されてしまう。
コミュニケーション命
雑談や飲み会での会話は、その内容自体に意味があるわけではないことが多い。ただ、これをすること自体にとても大きな意味がある。雑談や飲み会を通して同じ組織の一員として関係性を築いていくことができるし、組織でうまくやっていきたいという意思があることを示すことができる。あまり職場の人と馴れ合いたくないとか、貴重なお金と時間を使って飲み会になんか行きたくないという人も多い。しかし組織に属する以上はそのようなコストがどうしてもかかってくる。
雑談のような自由度の高い会話をするときには2つのコツがある。
①たちつてとなかにはいれ
雑談でよく話すテーマの頭文字を並べたもの。左から食べ物、地域ネタ、通勤通学、天気、富、名前、体、ニュース、はやり、異性、レジャーである。雑談が苦手、あまり話したことのない相手で話題に困ったときは、このような話題で話してみるとよい。
②ヒト・コト・モノ
①で挙げた話題をどの視点から深堀していくか、ということ。たとえば釣りが好きな人がいたとして、ヒトだったらその人の嗜好とか性格、コトだったら釣りって具体的にどんな感じなのか、モノだったら釣具や釣れた魚の話などで話を広げることができる。
雑用大事
若手には最初から難しくて責任のある仕事を任せることはできない。また、最初のうちは若手がどんな人なのかも掴めていない。だから、最初は誰でもできるような簡単な仕事、いわゆる雑用をふることで信頼に値する人かどうかを確かめている。
もちろん本来の仕事で結果を出して評価されたいという気持ちは重要だが、雑用も組織のためになる大事な仕事である。そのようなことを率先してする姿勢は必ず誰かを助けているし、見る人は見ている。
まとめ
実力がない若手が組織で生きていこうと思ったら、組織に合わせたり嫌なことを我慢したりすることは必ず出てくるし、それをある程度受け入れなくてはならない。しかしこれは自分を完全に殺して組織の犬になるということではない。経験が少ないとどうしてもなにか嫌なことや辛いことがあったときに続けるか辞めるか、のように0か100かで極端に考えてしまいがちだが、大事なのはバランスである。目安として、「受忍限度」を意識するとよい。これは、社会通念上我慢できるよね、と考えられる範囲のことを指す言葉である。この範囲内でうまく組織の一員としてやっていくことが大切だ。
感想
一人で生きていく場合と違って、組織のなかでは自分の役割以外のことも積極的にやっていくことが大事というのは自分の中で一番刺さった。今まで自分は自分が何をすべきかしか考えていなかったが、それは誰かが面倒なことをやってくれていたから自分が快適に生きることができていただけだったことに気づいた。これから社会人として一番何もできない立場で会社に入ることになるので、学んだことを心に留めて生きていきたいと思う。
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