2022年4月5日勉強会レポート システム屋の商売の仕方について

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2022年4月5日に行った勉強会「システム屋の商売について」のレポートと感想である。

一括りにサービス業と言っても、扱う物事によって契約や制度等、多くの違いがある。今回は、弊社がシステム屋であることから、システム屋の商売の仕方についての勉強会を行った。

 

勉強会内容

提供するもの

サービス業は客ありきの業種であるが、直接形あるものを提供する職種もあれば、形の無いものを提供する職種も存在する。そしてIT業界に絞っても、ハードウェアのような形あるものを提供する会社、ソフトウェアや通信あるいは情報処理のような形の無いものを提供する会社が存在する。その中でも弊社はシステムが中心の会社であるため、ここではシステム屋の提供するものについて説明する。

システム屋は主に「モノもしくはサービス」「役務」「利用権」を提供している。

 

  • モノもしくはサービス

具体的にはシステムやプログラムといったソフトウェアや、画像や文書を形にしたドキュメント等である。これらは客に直接的にモノとして提供するものであり、完成された状態のものを提供することが大前提である。

 

  • 役務

いわゆる労力である。モノの完成度とは別に、定められた期間に発生する、業務に従事する従業員の時間や能力を提供するということである。

 

  • 利用権

モノやサービスを利用する際に発生する権利のことである。例として、マイクロソフトオフィスのライセンス等がこれに当てはまる。あるシステムの権利を顧客に提供した場合、顧客がそのシステムを有効的に活用しようがしまいが、利用の仕方は顧客次第となる。

 

契約

提供するものが存在する以上、顧客側と提供側の間には取引があり、公正な取引を行うためには必ず契約が存在する。契約とは「公的な効果を持つ、約束を形にしたもの」であり、提供するものにより形や内容が違う。そのため、契約ごとに絶対的な契約と部分的に守らなければならない契約が存在し、負う責任ごとに価値も変化する。中でもシステム屋の商売に関わる契約である、「請負契約」と「準委任契約」について説明する。

 

  • 請負契約

絶対的に遵守すべき約束事であり、提供するものとしては特にモノやサービスが当てはまる。顧客に提供するモノやサービスは、完成度が絶対的なものを求められているため、不備があるものを提供する訳にはいかない。不備があるものを提供した場合、顧客が絶対的に業務上で必要とする機能が十分に使用できず、全く目的を果たせなくなってしまう。そのため万が一不備が発生した場合は、その責任は絶対的に提供側が負わなければならない。

しかし、請負契約として完成度が絶対的なものを提供しなければならないが、提供後に不備が発生することは起こり得る。その不備に対応・保障するものが「瑕疵担保」である。ただし、作成物は永遠に不備なく使用できるものでは無いため、ある一定期間を設け、その期間内で対応することが条件である。

 

  • 準委任契約

請負契約とは違い、完成したものに対して絶対的な責任は負わず、役務等にかかる部分的な約束事である。例としては、準委任契約として期間が定められた中でモノやサービスを作成する従業員を客先に投入した場合、契約期間の満了日を迎えた時点でモノやサービスの完成度に関係なく、従業員の業務が終了するような場合である。この場合、例え作成物の完成度は十分なものでなくても、提供側は作成物に対して事実上は責任を負う必要はない。特に役務に関しては労働者という「人」が関わるため、法律上の観点からデリケートな部分である。ただし、法律上では役務に関することを挙げられると難しい対応ではあるものの、商売上仕事人としては請負契約の気持ちを持って業務に取り組むことが大前提である。

 

成果物と作成物

提供するものとして代表的なモノやサービスは、いわゆる成果物や作成物と呼ばれるが、これらにも契約の違いが存在する。日頃から耳にする「成果物」と「作成物」は、無意識にただの類義語として扱われることも多いが、この二つの間には明確な違いが存在する。その違いは、「成果物:請負契約で作成を約束したもの」であり、「作成物:準委任契約で作成するもの」である。

これらのことから成果物と作成物には大きな違いが発生するが、これは法律上の話であり、契約の項でも述べたように、商売上としては作成物もいい加減なものになってよいという訳ではない。

 

善管注意義務

特に準委任契約の場合、提供するもの全てに絶対的な責任を負う必要はないが、消費者目線からすると、提供したサービス以上のサービスを求める場合がある。その場合、本来は事実上、提供側はそれ以上のサービスに応える必要はないが、それでは消費者が困ることになってしまう。その消費者を保護する観点から生まれたものが「善管注意義務」である。

例えば、客先にシステムを導入するだけの契約であったが、客がそのシステムの使用方法について分からないため、手取り足取り教えて欲しいと要求してきた場合である。本来であれば導入するのみの契約であったため、提供側は使用方法について説明しなくても良いはずであるが、それでは客側が困ることとなる。このように、責任を負う必要は無いが、確かに放置もできないような状態をカバーするための義務である。

ここまでの内容から、提供するものごとの契約や契約内容の違いについて述べてきた。商売を行う上ではトラブルの発生を防ぐ、もしくは最小限に抑えるためにも契約や制度についてきちんと把握し理解することは重要である。しかし、凡例主義の日本では、法律上と道義上の両方の責任を求められ、提供する側もそれに応えてしまう。何もかもを客の要望通りとしてしまうことで、本来提供すべきものの目的を見失うことにも繋がりかねないため、会社の規模を考慮した上で法律上と道義上のバランスを考えながら商売をすることが重要である。

 

最後に

私は弊社で働くまで、アパレル業界や飲食のサービス業に従事していた。そのためIT業界(特にシステム屋)に関してはサービス業という認識はあったものの、具体的な提供物や契約についての内容はあまり具体的に想像できないでいたが、今回の勉強会から具体的内容を通して学べたことが多くあった。具体的な用語についてもだが、特に法律上と商売上(道義上)についての仕事の在り方について考えたとき、自身は直接的に客と関わる立場ではないものの、普段から作成している作成物にも時間やお金が発生しており、また他従業員の作成物をレビューする立場としても、責任を持ちながら行わなければならないことに改めて気付く機会となった。

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