この間、某人売り会社の人とWeb会議をする機会があり、その時の話が有益だったので備忘がてら書いてみる。
背景
前に記事を書いたが、俺は電話が嫌いだ。
正確に言えば会社の電話が嫌いだ。
というのも、クソみてえな営業会社が用件も言わず「社長います?」だなんてクソ馴れ馴れしい営業電話をかけてくることが殆どで、有益な電話は10%もない。
しかし、まともな話も10%ほどあるため、一応ちゃんと対応するのだが、90%はクソみてえな営業電話なので毎回ゲンナリする。
この日この時も、そんなクソ電話だろうと思って電話を取ると、某厚労省のナントカカントカ。
話を聞いてみると、人材紹介?
よくある人売りかと思っていたら、聞く価値がありそうだったので、Web会議をすることになった。
後日また電話が鳴り、取ると某有名人売り会社。
まあ正直、もともとの印象は最悪。俺は人を右から左へ流すような商売が嫌いだから。
それを商っている会社も、そこで中抜きされる立場に甘んじている人間も。
ただ、承った以上、やっぱりイヤとは言うのは筋が通らないので、日付を詰めた。
話を聞いてみた
まずは前振りから入ると、IT業界の需要は高まり続けているのに、これまでIT人材は微増しかしていないらしい。
そして、IT業界以外の業界では、IT製品やサービスの発展、AIやロボットの登場なんかで、事務職が余っていくとのこと。
(いま既に余りつつあるみたい)
じゃあ、余っていく人材をコンバートしてIT人材にすりゃいいじゃん。
そうすれば、失業する人は減るし、IT業界の人材不足も緩和されてWin-winだね。
ただ、IT業界では他の業界と同じかそれ以上に実務経験が重視される。
だから、IT人材になりたてのビギナーを派遣として雇ってくれないか?
いくらか補助的なものも出るし、社員にするとき通常請求する手数料も取らないからさ。
これ、かなり世のため人のためになる話だよな。
某人売り会社に対して一方的に悪い感情を持っていたのだが、改めた。
もちろん会社として利益があるからやっている、あるいは利益を出すためにやっているのだろう。
だが、話に説得力はあったし、少なくとも話をしてくれた人からは誠意を感じた。
ただし問題もある
まず、他の業界からリスキリングしてIT人材にコンバートするってことは、決して若くはないということ。
人事採用では、ぶっちゃけ若さは相当に重要なファクターだ。
若いというだけで将来性があると解釈されるし、少々ヘマしようが覚えが悪かろうが、内輪も客も多めに見てくれる。
しかし、対象の年齢層は35歳以上、しかし30代はとても少なく、40代や50代が多いようだ。
どれだけその業界歴が浅かろうが、内輪からも客からも「その年齢なんだから、それなりにできるよね?」と見られてしまうであろうことは想像に難くない。
それに反して、若さという免罪符のない手のかかるビギナーなわけだから、抵抗感を持つ人も少なくないだろう。
また、年上後輩に対して教える側に立つこと自体を嫌がる人も多いわな。
また、SAP業界に長くいる経験上、基本的に50代から需要がものすごく減る。
PMや営業やリード層はともかく、平メンバーというか作業者としては嫌がられる傾向がある。
じゃあ対象者が40歳だったとして、ソコソコわかってくるレベルになるのが43~45、一人前と呼べるのは50だろう。
それまで実績をしっかりと積むことができたなら、それでもいいかもしれない。
でも、45歳だったとしたら、ソコソコレベルになるのが48~50、一人前になるのは55。
これは正直、厳しい。賞味期限が短すぎる。
暗黙的にコンサル枠で語っていたが、じゃあ開発者枠ならどうか?
悪くはないのかもしれない。
ただ、そうなると中国人やら韓国人やらインド人やらが競合になっていく。
(もちろん彼らの中でも、コンサル枠で活動する人は多くいるが)
20年くらい前と比較すると、「外国人だから」と言っていられない程に彼らは溶け込んでいる。
もちろん文化の違いから生まれる擦れ違いもあるが、ヘタな日本人より日本語が通じることもしばしば。
それに日本人=真面目なんて図式はとっくに崩れていて彼らの方が真面目にやってたりするし、傷つきやすい若手日本人と違って打たれ強いし。
そういう連中と切磋琢磨するガッツが中年になっても残っているなら競い合えるだろうけど、どんなもんかね。
ビギナーで日本人のオッサンオバチャンvs若手の外国人という図式になれば、分が悪いかもしれない。
そもそも、日本のSAP業界で働く外国人は母国語と日本語と英語のトリリンガルな人も多く、その時点で優秀かつガッツがある相手で、しかも若さまで備えていれば旗色が悪い。
ただ、マジで人手が足りない!という状況がずーーーっと続いているわけで、どっちも働く枠はあるだろうけど。
少なくとも、仕事の取り合いで価格競争になることはないだろうが、比較はされちゃうだろう。
メリットもある
マクロ目線とミクロ目線の見方があるが、大きい方から言えば、IT業界以外の人余りが解消されかつ失業者が減り、IT業界の人手不足がマシになるってことなので、これはIT業界やSAP業界のみならず、日本中のためになることは間違いない。
もちろんこの試みの中で公金を吸い上げたり私腹を肥やしたりしようとする輩もいるのだろうが、それでも構わないくらい世のため人のためになる。
(そもそも営利目的の民間企業が関わる以上、利益は上げざるを得ないわけだし)
言葉通り解釈すべきでないのかもしれないが、70歳を過ぎても働く時代が来るかもしれないって話もあるわけで、それなら40で始めて50で一人前になったなら、70歳まで20年もある。
その期間をIT業界でそれなりの給料を得ながら生きていけるなら、下手な額の貯金よりも資本になるだろう。
小さい方の目線から言えば、教育や研修という投資が無駄になりづらいであろうこと。
新入りが来て、あれもわからんこれもわからんので手取り足取り教えて、少し手がかからなくなってきたかな?ってくらいで辞めていく。
現場の仕事をやりつつ、しんどい中で新人の面倒を見てたのに、うわマジかよ・・・
これがどれだけの脱力感を生むか。いくらか社会人をやれば経験する人も多いだろう。
更に、金に責任を持つ立場の人には、そこに加えて応募採用と教育と事務手間のコストがのしかかってくる。
ていうことろで、この試みの対象者は腹が座っているであろうことはメリット。
というのも、エントリーするためには、途中でギブアップする人もいるくらい、それなり過密な教育を半年ほど受けるらしい。
そもそも、いい年になってから未経験の業界に飛び込もうと思ったり、そうせざるを得ない状況だったりするからトライをするわけ。
で、恐らく退路なんてないだろうよ。やるしかないわけ。
ちょっと怒られたり上手くいかないからって、すぐ辞めますとか俺向いてないのかななんて、甘ちゃんなことは言わないだろう。
若さとは将来性の塊のような要素だが、若者はとにかく仕事を辞めたがる。
辞めるための理由を探しているのか?ってくらい辞めたがる。
ブラックで辞めたがるのはわかるが、せっかく入ったホワイト企業をぬるま湯で不安だとか言って辞めたがる。
もちろん本人にとって思うところがあるわけだから、全面的に否定はしない。
でも、企業にとって応募採用や教育のコストが無駄になることやそのリスクを負うことは厳しい負担なんだ。
この制度ではそのリスクが減るわけだから、企業にとっては選択肢の一つだろう。
じゃあ、どうすんのよ
何度も書くが、試みとしては素晴らしいと思う。
人がダブつく仕事から人手不足の業界にコンバートすることで、供給過多を減らし需要に追い付いていない部分を補う。
70歳になっても働くなんて時代になりつつあるなら、40代からでもIT人材になれたら老後の不安が減る人も多いだろう。
SAP業界やIT業界といった限られたエリアのみならず、日本のためになる。
ただ、現状でわかりやすい障壁が2つ。
1つは、客側やベンダーが持つ50代を超えた技術者に対する抵抗感。
これは一朝一夕ではなくならないだろう。
人が足りないんだから仕方がない、と徐々に受入を進め、たくさんの人の中にそういう人も紛れ込ませて、時間をかけて啓蒙と誘導をするしかない。
もう1つは、中小零細では取り組みづらいこと。
というのも、実務経験がものを言うSAP/IT業界では、OJTで仕込むしかないわけ。
だけど、中小零細はそもそも人が少ないわけで、それなり1人&素人1人でプロジェクトに入るとすれば、それなりの人は自分のノルマをこなしながら素人の教育をしつつ、素人の分の進捗も担保しなければならない。
大手なら、まとまった単位で仕事を受けたりプロジェクトレベルで受注したりするから、10人チーム体制のうち素人を2~3人いれるなんてこともできて、現場の人たちにかかる1人あたりの負担は減らすことができる。
そう、こういうのは大手がやってみてくれないかな・・・
まあ、某厚労省やら某人売り会社の人がウチみたいな零細に声をかけるくらいだから、決して順調ではないのだろう。
ただ、ウチみたいな零細でも、微力ながら世のため人のためになりたいとは思っているので、開発者枠で1~2人取ってみようかな?とは思っている。
株式会社Exciter代表。アラフォー。釣りとSAPが好き。
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