この記事は、これからIT資格の取得を目指す方に向けての記事の後編である。前回「IT業界を目指す方必見!ITスクール講師がおすすめするIT資格と勉強法について~前編」においてIT資格には様々な種類があり、その中で自分がどの道に進みたいのかロードマップを考えて、その道に沿ったIT資格を目指していくことが重要とお伝えしたが、本編では試験に合格するための具体的な勉強方法について触れていきたい。

ただ闇雲に勉強しても効率が下がるため、なるべく最短な道で合格するためには何をすればいいのか、ぜひこの記事を参考に自分に合った勉強方法を探して、資格を取得してもらいたい。
自身のスキル状況や受験する試験によっても勉強方法や合格に必要な勉強時間が変わってくるため、ここでは下記を前提基準としている。自身に置き換えてシミュレーションをして希望するIT資格を取得してもらいたい。
<前提>
・IT未経験者でWordやExcelで文章や表を作成することは可能。関数などは使えない。
・IT分野ではない会社で正社員として働いていて、平日は1時間、土日で4時間くらい勉強時間を確保できる。
・受験する資格で国家試験は基本情報技術者試験、ベンター系資格はネットワークベンダーのCCNA試験を目指している想定
資格勉強に入るための事前準備
IT資格を取得する上で、いきなり参考書を買って問題集を解き始めるのではなく、事前準備が大切だ。以下の5つにまとめてみたのでチェックしてもらいたい。
情報を徹底的にリサーチせよ!
自分が受験したい資格がどのくらいの難易度なのか、何点取れば合格できるのか、勉強時間がどのくらい必要なのかを調べることは非常に重要だ。国家試験とベンダー系試験(民間資格含む)で確認できる範囲が異なるため、それぞれのケースを確認してみよう。
国家資格の場合
ここでは基本情報技術者試験を例としているが、基本情報技術者試験は科目A試験と科目B試験の2部から構成され、いずれも1,000点満点中600点以上をクリアしなければならない。逆に言えば、600点以上取得すれば合格できることになる。
次の表を見てもらいたい。こちらはIPA(IPA 独立行政法人 情報処理推進機構)が発表している令和3年度の秋に行われた基本情報技術者試験とその上位資格にあたる応用情報技術者試験の合格率である。
基本情報技術者試験よりも上位となる応用情報技術者試験の合格率は20%台と低い。それと比較して基本情報技術者試験は受験者の4割近くが合格している。
試験のレベル的には難関ではなく、きちんと勉強すれば合格できそうな資格であることがわかる。
勉強時間について初学者は200時間が必要とされている。勉強時間も勉強計画を立てる上で参考となる情報なので調べておいてもらいたい。
ベンダー系資格の場合
ベンダー系資格は試験会場が空いていれば、基本的には一年中受験可能な資格であるが、
国家試験とは違って合格率は公表されていないことが多い。
合格点についても公表されていないケースが多いが、情報はインターネット上に落ちていることが多い。例えばネットワークベンダーのCCNA試験の場合は1000点満点中825点~850点以上を取ることができれば合格できるとされている。また、勉強時間は200時間必要とされている。
まずは自分が取得したい資格で何割取れば合格するのかをしっかり押さえてもらいたい。満点を目指すのではなく合格点を目指すということだ。勉強時間がどのくらい必要なのかを把握することで、いつ受験するかの目安になる。
また、試験問題の出題傾向としてどのような傾向にあるのかも是非押さえておこう。
退路を塞げ!
国家試験の場合は試験日が決まっているため、その試験日に向かって準備を進めていけばいいが、ベンダー系資格は基本的にテストセンターが開催していればいつ受験してもよい。自分で受験日を決めることができるのである。
ここで注意してもらいたいことが、ある程度勉強してから受験日を決めるというパターンだ。このパターンが圧倒的に多いが、この方法はおすすめしない。
仕事終わりで今日は疲れたから明日から頑張ればいいとか、週末になって予定が入ってしまったからまた来週から始めようなど、何かと自分に甘えて勉強を先延ばしにして、結果3ヶ月で取得できる資格を半年とか、場合によっては1年かけている生徒さんも中にはいる。最悪、試験自体を受けないというオチになるパターンも見てきている。
このようにならないためのおすすめは、合格に必要な勉強時間を参考に試験日を決めて、試験を予約するところまでを先にやってもらいたい。
試験を予約することは支払いを済ませるということなので、金銭的な面からも覚悟を決めざるを得ない。自分の意識を強制的に変えてしまうことが大切だ。
ただ、業務事情などにより全く勉強できないというケースもあるだろう。試験はキャンセル可能な試験が多いため、その場合はキャンセル費用がかからないぎりぎりまで様子を見てキャンセルするかどうかを決めればよい。
ベンダー系資格は試験費用が高く、落ちたくないためしっかり準備をして不安要素をなくしてから受験したいという気持ちは良くわかるが、資格はあくまで通過点なのでそこに長く時間をかけるのではく、短期集中で合格を目指してもらいたい。
綿密な勉強計画は立てるな!
基本情報の場合は未経験者の場合、約200時間が必要と言われている。
仮に毎日1時間とした場合は半年かかる計算である。1時間といえども毎日コツコツやるのが正直しんどいと思う。
もちろんコツコツやる方がいいという方も中にはいると思うが、よほど強い想いがない限り半年間毎日勉強を続けるのは難しいと思う。難関と言われる試験以外は基本的には短期間3ヵ月で勝負を決めたい。
3ヵ月と設定した場合、時間としては毎日2時間必要になる計算だが、そこに囚われすぎないことが重要だ。働いている方にとって毎日2時間は大きな負担である。仕事の事情で十分な勉強時間を確保できない日もあるだろう。そういう日が続くと気持ちばかり焦ってしまい、途中で勉強を放棄してしまう可能性が高い。そのためあくまで勉強時間は目安くらいに考えてもらえればいいと思う。
資格試験の勉強方法
さて、ここでは具体的に何をすればいいのか勉強方法について見ていこう。
過去問から取り掛かれ!
問題に慣れるという意味でもまずは過去問から取り掛かろう。参考書を一通りやってから過去問を解くというのはNGではないが、時間がかかる。最短での合格を狙う場合はまずは過去問演習だ。過去問からどのような試験が出るのか、イメージを掴むことができる。
ここでの注意点としては、丁寧に1問1問解説を読んでいたら、30分、1時間があっという間に過ぎてしまうだろう。また、それぞれの問題全てを理解しようと思って解説を読み進めないほうが経験上良い。中には解説を読んでも理解できないケースがあるだろう。
ちゃんと理解した上で次に進みたい気持ちはわかるが、何より時間がかかるし意味がわからない問題が続いた場合は嫌になってしまう可能性がある。
そのため、初めは深く解説は読まず、流し読みするような感覚で次の問題へと手を進めていってもらいたい。
なお、国家試験の基本情報技術者試験の場合、過去問は是非このサイトを使ってもらいたい。過去の試験問題演習ができ、解説も非常に丁寧に書かれている。

過去問を周回せよ。
試験問題を1周するようなイメージで解き進めて、次に同じ問題を2周してみる。計算問題か、暗記問題か1周目よりもなんとなく傾向を掴めて来ると思う。
続いて3周目。少しずつ解説も読んでみよう。解説を読んでもさっぱりわからないという問題はパスする。そこに時間をかけても同じ問題がでるとは限らないし、より点数が確保できそうな問題に比重を置こう。
合格するためには全問正解する必要はない。7割を突破すれば合格が見えてくる。そのためすべてを100%にする必要はなく、時間をかける問題とかけない問題を見極め、時間をかけてもわからなそうな問題は潔くパスするのがいいと思う。
その分、確実に点数が取れそうな問題に注力して勉強していくことが大切だ。
参考書で補え
過去問を3周、4周としていくと自分の苦手な分野が分かってくると思う。よくつまづいてしまう問題については参考書を使って知識を補おう。
正解できている問題について余力があれば参考書で強化するのもありだが、時間が限られているので間違えてしまう問題に注力しよう。
その際に参考書を読んでのアウトプットは過去問を使っていくことを意識していこう。
着実に知識を定着させて深く学びたい方は、時間に余裕がある方もしくは試験が終わってから、じっくり時間をかけて学ぶのもありだと思う。
スキマ時間は有効に!
仕事に向かう通勤途中や可能であれば昼休みなどを勉強時間に充てよう。スキマ時間は短時間なため気楽な気持ちで取り組むことができるし、時間を区切ることで集中力が増し、効率よく勉強ができる。
単語帳などを持ち歩いたり、スマホでも過去問演習ができると思うので毎日電車の往復で2問、昼休みに3問の合計5問やるだけでも全然合格率が変わってくる。常に触れ合っているという感覚を定着させることで時間への意識が変わるし、帰宅したあとでも寝る前にもう1問など時間の活用を考えられるようになると思う。
無駄な時間をなくし、その時間を勉強時間に充てるという意識が重要だ。
実機を触ろう!
これは主にベンダー系資格になると思うが、可能であれば実機にも触れておこう。ベンダー系資格ではコマンド実行などの問題もよく出てくる。実際にコマンド入力することで机上の勉強よりも定着率は全く異なってくると思う。
とは言え実機を用意するのは大変だと思うので、WEB上で検索すればエミュレーターなどで代替できる場合がある。是非チェックしてみよう。
試験直前の準備について
いよいよ試験まで2週間を切るとなった場合に最終仕上げということで2週間前、試験日前日と当日の動きをそれぞれ見ていこう。
試験日2週間前の過ごし方
試験日前の2週間になっても、ひたすら過去問を解きまくる。という基本は変わらないが、時間を計って本番さながらに過去問を解くということを行ってもらいたい。
基本情報技術者試験やベンダー系資格で時間が足りなくなるということはないと思うが、試験当日は緊張してしまってパフォーマンスが低下してしまう可能性もあるし、通常よりも問題をじっくり読んで解答するので1問あたりの解答に時間がかかる。
そのため、試験時間に慣れることが非常に重要だ。1問どのくらいで解けばいいのか、時間配分は問題ないか時間を計って本番さながらに解いていく。
間違えてしまう問題については当日でも振り返ることができるようにチェックをつけておこう。
また、試験会場や当日の行き方、試験で用意するものなども確認しておこう。
試験日前日と当日の過ごし方
試験日前日は新しいことはせずに過去問で間違えた問題を見直す程度にしたい。前日になって不安になり、あれもこれも手を出してしまうと余計に不安を増長させるだけである。試験会場を確認して、試験当日頭が冴えわたるように早く寝ることだ。
試験当日のおすすめとしては、試験集合時間の2時間前に現地に到着することだ。
私がよくやるのが、試験集合時間の2時間前にカフェに入り最終追い込みをかける。
ほど良い緊張感と共に最終チェックができる。また、早く到着することで交通機関のトラブルに巻き込まれる確率も下がるため、早めに現地に到着した方が良い。
まとめ
資格勉強は自分に合ったものがあると思うが、他の生徒さんたちを見た中では過去問をしっかり勉強した人がしっかり合格を勝ち取っているという傾向にある。そして日々の暮らしの中でどれだけ資格勉強を取り込めることができるか、接しているかが合格率を上げることに繋がっている。これから資格勉強を始める方へ少しでも勉強のヒントになれば幸いである。
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