この記事は30才未経験でIT業界に転職して40才になったことを機に、この10年間を振り返ったIT未経験者の回想録である。
IT未経験者がエンジニアに転職をする際は年齢制限が一般的に設けられており、30代前半が目安とされている。理由としてIT業界の成長スピードは、他の業種に比べてもスピーディーで常に新しい知識を得ていく必要があり、昼夜問わずPCに向かって作業を行うことは想像以上に体力やメンタルを消耗するため、若ければ若いほど良いとされているからである。
また、30代は管理職となる一歩手前の年代であり、後輩社員をマネジメントしていく立場でもある為、30代のIT未経験者の転職は厳しいことが現状である。
私は、30才でなんとかIT業界に転職できたものの、ITスキル等が足らずに結果的に挫折ばかりを繰り返してきた。その中でも諦めずに泥臭くしがみついていた結果、なんとか今は生計を立てることができている。
20代の皆さんには現状に甘んじず、年齢というアドバンテージを活かして更なる高みを目指していただきたい。30代の皆さんにはIT業界にチャレンジした当時の気持ちに立ち戻り見ていただければ幸いである。
IT業界にチャレンジ!
前の会社を転職した理由について
社会人1年目、学生時代にアルバイトをしていた会社にそのまま就職し、30才までの約7年間を過ごしている。
その会社は成人向けDVDを販売している会社だった。その会社に新卒で入社した理由は、当時はスマートフォンがなくガラケー全盛期で、着メロや待ち受け画像などのコンテンツでマーケットが活気づいていた。
そんな中で新規事業として携帯待受けカテゴリにコンテンツを配信するという事業の立ち上げ段階から携わることができるという話を社長からいただいたのが入社の決め手だった。
当時のメンバーは委託していた開発業者1名、外部アドバイザーと私の3名でスタートした。
開発費やアドバイザー費、サーバ保守費や私の人件費等を抜いても2年目で黒字化したものの、配信用に画像と動画を毎日加工するというルーチンワークに飽きていたことと、以下の理由からIT業界に転職を決めた。
・年収が330万円と入社してから7年間変わらなかったこと
・会社は都内にあったが、妻の実家からの通勤が大変だったこと
※こちらを参照↓

・サイト上にバグが多く、サイトに接続できなくなるという時間も多かった。接続不具合によるユーザからの問い合わせも多く、自身では何もできなかったことが歯がゆくて、自分で不具合を直せるような技術を身につけたかった。
・社内には社内SEが1名おり、社長から重宝されていたのでそのポジションが羨ましかった。
IT業界を選んだ理由と当時のスキルについて
前述の理由に加え、ITがこれから益々身近になり市場が大きくなることで、年収アップが見込める可能性があるということが一番大きな理由だった。
転職当時のITスキルは下記の通りでゼロに等しかった。
<30才当時のITスキル>
・Excel(関数等はわからず、単に文字を入力し、セルの色を変更できるレベル)
・Adobe Photoshopを使った画像加工
・Adobe Premierの動画加工
祝!プログラマーデビュー!鬼軍曹との出会い
上記の理由により、初めての転職活動がスタートした。これが自身初の就職活動でもあった。応募を合わせると30社以上への転職活動をし、面接まで漕ぎつけても30才で未経験が引っ掛かり、なかなか内定をもらうことができなかった。ようやくプログラマーへの内定が決まったのは、転職活動を始めて約4ヶ月が経った頃であった。
新しい会社では年収は以前と変わらなかったが、通勤時間は今までより1時間短縮となり、何よりようやくプログラマーの道に立てたのがうれしかった。
ウキウキしながらの初出社。簡単な挨拶を済ませると、業務内容についての説明もないまま上司(以下、鬼軍曹)に渡されたのが、PHPの本一冊だけだった。当時のスキルは前述の通りで、本を開いても本当に呪文のようにしか見えなかったことを覚えている。
未経験者ということを考慮して、一から説明をしてもらえると甘かった考えを持っていたことを反省し、ここから毎日鬼軍曹にしごかれる日々が続く。
開発者がよく言う「自分が作ったプログラムが動くのが楽しい」なんてものは全く感じなかったし、毎日朝は誰よりも早く出社し、夜は終電で帰宅するという日々を約半年間続けた。
いわゆる芽が出る気配もなく、次第に出社しようとすると蕁麻疹が全身に出始めてしまうなど(笑)体が拒否反応を示していたため、転職を考え始めた。
しかし、転職したばかりということもあり、これ以上転職回数を増やしたくないという思いもあった。
その結果、他部署への異動を申し入れた。わずか半年で異動するということで周りからは白い目で見られ、それでも生活しなくちゃいけないから仕方ないと自分に言い聞かせて去っていったのを覚えている。ほろ苦いデビュー戦だった。
IT営業への異動。鬼軍曹2号の出現。
異動後の場所は東京。そう、異動と引き換えに再び東京に戻っていた。それでも心機一転、新しい環境で再スタートを切ろうとしていたが、営業に移動した初日に洗礼を受けることになる。
初日は東京ビッグサイトでの展示会出展においてのアテンド業務。早い話が呼び込みである。ミッションは多くの人と名刺を交換することであった。
商材はクラウドサービス。オンプレに置いてあるサーバをクラウド上に引っ越ししませんか?というサービスである。
早速営業の上司(以降、鬼軍曹2号)に会ったものの、電話やメールの優しい受け答えとは打って変わり、会って早々にいきなり2時間の説教を受けた。気持ちはもう萎えに萎えた。ただここで辞めるわけにもいかず、言われっぱなしで悔しいという気持ちは少なからずあり、爪痕を残したいと思っていた。
どうすれば多くの人と名刺を交換できるだろうと考えながら、試行錯誤を続けた結果、名刺は誰よりも多く交換することができた。鬼軍曹2号は特に褒めてもくれなかったが(笑)、少し自信がついた。
展示会後は毎日電話でアポを取る日々が始める。商材はクラウドサービス。
今よりもおよそ10年前でまだAWSやAzureなどのサービスが今より浸透していなかったため、アポが取れても商談に繋がることはなかった。
それでも毎日少なくとも1日50件近く営業電話をする日々が続き、アポ取りはとにかく必死だった。その環境で生きていくには、アポイントを取ることが必要だった。
営業は全部で4人いたが、アポイントは誰よりも取ることができ鬼軍曹2号にも少しずつ認められてきたと思ったのがまたしても甘かった。
当然アポイントを取ることが目的ではなく、商談を成立させることが目的である。お客さんはIT担当者なのでIT未経験者の知識では何が先方の課題なのかが全くわからず、提案をすることができなかった。
導入しているシステムも企業によって多岐に渡るため、せめて浅く広くのIT知識が必要だった。
なお、顧客訪問先の同行者は鬼軍曹2号である。訪問先を終えての毎回のダメ出しや、移動時の2人だけの時間が苦痛過ぎた。結局耐え切れずにこの環境から逃げ出した。
プログラマー歴6カ月、営業6カ月のトータル約1年で2社目を去った。
あまりに弱くて無力の31歳。もちろん次のあてはなかった・・・
迷走!諦めきれないIT業界への道
再び転職活動に戻ることになる。幸運にも転職活動を始めて2か月後、地元から電車で1時間以内の会社に就職が決まった。未経験者歓迎の会社で社員数は4名だった。再度チャレンジできると思い心が躍った。この時は32才だった。
鬼軍曹はこの会社にはいなかったが、医療系システムの開発ということで採用してもらったが、やっていたことは医療機器の販売だった。毎日車で病院を回る日々が続く。いわゆるルート営業である。数字をあげなくちゃいけないというプレッシャーはあったものの、前職に比べれば精神的にも楽だった。
給料は年収330万円の据え置き。先生が顧客なので毎日先生の診察が終わるまで車の中で待機しなくてはならず、先輩社員に習って車の中で寝て時間を潰すという日々が多かった。会社の雰囲気はよくて社員間の仲もよかったのでなんとなくこれでもいいのかなと思っていた。
ただ頭の片隅にもう一度プログラマーに挑戦してみたいという思いも再燃しており、車の中での昼寝を辞めて、試しにIT系の資格を取ってみようとIT未経験者の登竜門であるITパスポートの勉強を始めた。
無事にITパスポートを取得できたことがめちゃめちゃ嬉しくて、一気に転職の気持ちを後押しする形になる。
1年ほどでこの会社を辞め、いよいよインフラエンジニアとしての道を歩むことになる。
ようやくスタート!33歳インフラエンジニアデビュー
ここに来てもう4社目。一気に転職回数を重ねてしまったわけだが、33才で未経験でインフラエンジニアに応募してみた。なぜインフラエンジニアなのか、それは前職の営業時にPCリプレイス対応でPCキッティングやプリンターの設定を行った際にこれならできるかもしれないと思ったからだ。
その僅かな経験ともう引き下がれないという熱意を買ってもらったのか、何とか就職できた。都内にある会社だが、もう贅沢は言えない。
その会社から派遣契約している会社に出向し、工場で使用するPCを納めるPCキッティングの仕事を始める。
1日2~3台、多い時には1日10台のキッティングをこなし、客先に訪問してPC設置、ドメイン参加やソフトウェアの起動確認、プリンターの出力確認などを行った。
サーバのキッティングは出向先の社員が行うため、作業はPCキッティングがメインだったが、これが楽しかった。台数をこなせばこなすほどスピードは上がるし、客先設置も一人で任されるようになると未経験者でもようやく認められたと思い嬉しかった。
2年ほど働いてサーバの知識も入れておいたほうが良いと思い、Windows Serverの資格を3つ、LPICレベル1と2、CCNAと次々に資格を取得していった。
資格を持っていても実務経験がないと使い物にならないのだが、資格は他の現場に移動できる切符のようなものであるのは間違いなかった。
その後、別の委託先に出向し銀行系のRedHatのシステム構築、DR環境の構築でvShere環境上にあるWindows Serverのパラメータ設定等をこなしていた。
この時35才を迎えており、第2子が誕生している。この会社が私の原点になったのだが、年収は360万円だったので更なる給与アップを狙い、5社目の現在の会社で働いている。
今は勤めて5年が経過し40才を迎えた。業務はインフラ運用からセキュリティ業務にシフトしていて更なる挑戦をしようと目論んでいる。
IT業界に入って10年を振り返り伝えたいこと
本格的に業務を始めたのが、33才からだったと思うが、30才以降でIT業界にチャレンジする際は注意してもらいたい。私みたいにバックボーンが何もないとついていけず、キャッチアップする努力は人一倍必要だと思う。
実際にPCキッティングをやっていた会社でも苦汁を舐めている。そこでも辞めようと思ったりしたが、必死に食らいついた。わからないことは徹底的に聞いたし、理解に努めた。
また30代未経験者の場合、業務レベル的に20代が周りに多いので、新卒メンバーを含めて謙虚に教えを乞う必要があるし、同じ世代はすでに管理職に就いているパターンもあり、年下が自分の上司なんてこともざらである。
これはIT業界に限った話ではないかもしれないが、そこに耐えられるかがポイントの1つだ。
30代未経験者でもなんとかやっていけるとは思うが、それなりの覚悟が必要だし、私みたいになんとなくITということだけだと、40才を迎えた時に何も武器がない状態になってしまう。
つまるところ、これから30才を過ぎてIT業界にチャレンジする方にお伝えしたいのは、何か1つをとことん極めることが重要だということを伝えたい。それが今後の自分の武器になる。
私もインフラを経験したが、たかだか数年。業務後は特段勉強もしていないので極めているレベルでもなく、そこにはあまり価値がないと思う。
30代IT未経験者でも何かしらの武器を持てれば、立ち回ることができると思うので是非自身を磨き、価値を出してもらいたい。
<総帥コメント>
IT業界の人手不足が続いている。
少なくとも、俺が東京に来た20年前からだ。
だからこそ、即戦力でない者も雇って育てなければならない。
未経験者相手だと教える方も大変だし、教わる方も大変だ。
何年も社会人歴があったタダシですら、折れたり逃げたりしていたわけ。
それでも家族がいるから踏ん張れたという面はあるはずだが、それでも逃げちゃうし、独身だと身軽なので更に踏み留まることは難しいのかもしれない。
IT業界に長年いるが、未経験者Welcomeの姿勢は崩していない。俺自身もそうだったし。
それでも、リアルにマジでシンドイ。
雇う方も、雇われる方も。
だから、綺麗事を言う気はない。
未経験者が転職してくるのは本当に大変なんだけど、それでもITは仕事が山ほどあるし将来性もある仕事だから、みんなIT業界・SAP業界にに来てね!
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