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IT部門の役割

Last-modified: 2014-07-29 (火) 13:38:58 (3553d)
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情報システム部門の役割について。



概要

昔の情シスは「お守り」だけだったが、今やそれだけでは許されなくなってきている。
筆者はIT部門に期待される役割を下記であると考える。

既存システムの「お守り」

今となっては付加価値が比較的低い分野だが、元々情報システム部とはここが主体であったように思う。

非常に重要であるが、ここをいくら頑張っても社内で評価されないのが辛いところ。
そのため、ここを担当すると「いくら頑張っても評価されないんだから、最低限しかやらない」「現状の改善?余計な仕事を増やすな!」というスタンスになってしまいがち。

そのため、この「お守りをすること」と「企画をすること」で、組織は分けるべきではないと考える。
変えられたくない人たちと変えることが仕事の人たちとで相容れるわけがないため当然見識の統一も難しく、IT部署の中でも意見がまとまっていないように映ってしまうためだ。

さて、社内に知見がなくなってしまうことはリスクだが、付加価値が低いこの領域はアウトソースし、社内や経営層に求められる分野に注力するという流れが今後更に強まるのではないかと考えている。

「カイゼン」のための企画と推進

いわゆる経営企画や情報戦略の性質その1で、「攻め」の性質を持つ領域。

いつの頃からか、ITの発展と浸透が見られるようになってから、多様なソフトウエアやハードウエアを用いて「業務プロセスやビジネス自体に良い影響を与えること」が期待されるようになった。
言うなれば、今まではコストセンターでしかなかったIT部門が、利益を創出する組織との期待が向けられるようになったと言える。
(コストダウンについて取り組むことも、広義でその性質を持つと考えて良い)

ITで解決可能な経営課題への取り組みや改善活動が主となるが、現状、IT部門に期待される機能としては、この部分が最も高いのではないだろうか。

元々の役割であった「お守り」に大した価値が無いと思われてしまい、今まで取り組まなかったために高い知見があるわけでもないこの部分がキーであるとされるのだから、情シスも大変である。

社内の統制やリテラシー強化、非常時対応とその計画

いわゆる経営企画や情報戦略の性質その2で、「守り」の性質も持つ領域。

セキュリティなど「守り」専門だけでなく、BCPのように「攻め」でもあり「守り」でもあるテーマが属するのはこちら。

その他、情報セキュリティ?IT統制?教育・トレーニング?によるリテラシーの向上など対象は多岐にわたる。

また、時勢や法改正などによって対応しなければならない内容が変わったり追加されることが多いのも、この分野。

部署間の調整

ご存じの通り、システムの導入では、要件をいかに正しく漏れなく吸い上げて、低コストで形にするかが肝要だ。
これについて、色々な部署間の意見を吸収し調整するという役割が求められるようになった。

背景としては、昔は部門や業務ごとに最適化が図られていたため必要なかったが、昨今のシステムは部門ごとの最適化を主眼に置くものは少なく、大抵は全社レベルで採用されるため必要となったこと、ITに関するものはIT部門でしょ、ということでIT部門は担うこととなった。

製造と調達と営業といった利害が完全に一致しない部門同士の調整は、精神的にも過酷を極める。

なお、システムの導入時だけでなく、運用においてもサービスレベルの調整などで同じことが言える。

シェアードサービス部門化

これまではグループ内でも会社ごとに存在していたIT部門を、システムやインフラを統一することによって、全会社であったりアジアやEUなどの地域別に統合し、運営するという期待も高まってきた。

これは高速なシステムとネットワーク網の発達により現実のものとなってきているが、シェアードサービスのマネジメントはともかくとして、サービスの提供自体は高い付加価値を持たないため、アウトソースされやすいところ。

インフラやネットワークについては、どうしてもサーバルームやデータセンターに入って作業するケースもあるため完全シェアードのリモート対応にはしづらいが、基幹システムなどのアプリケーション分野では随分と進んできているという所見。

個別トピック

CIOという存在と、部署間の調整

CEOやCFOと同じレベルで肩書があることは、これらと同じレベルで重要な役割だと考えて差し支えない。
いまや日本でもCIOの肩書は珍しくなくなってきたように思う。

しかしながら、CIOという肩書は必ずしも期待されている役割にマッチしていないのが現状ではないかと考える。
というのも、そもそもユーザ企業というのは事業会社であって、情報システムのスペシャリストではないため、CIOの肩書を背負うことができる人材を社内で見つけることは容易ではない、ということがまず一つ。

仮に社内の人材から任命されたとして、役割を全うするために効果が高いことに取り組もうと思った場合、ある程度ドラスティックな変革も行わなければならないが、現状を取り巻く部署間の利害や感情論について、組織の中にいる或いは組織の中にいた人間、とりわけ社歴が長いとそれまでの人間関係もあるわけで、バッサリと取り仕切ることは容易ではなく、波風立てずに進めることをよしとする日本の文化に合わないのだ。

では社外から採用するかというと、結局は最初から採用責任者の派閥に組み込まれることになって同じことに悩まされたり、「余所者が引っ掻き回そうとしている」などの心無い言葉や対応に悩まされ、よい成果が出ない場合も多いように思う。

ではどうすればよいかというと、CIOやCIO直轄の組織がトップダウンで進められるよう上意下達の権力体制を作る他ないのではないかと考えている。

「現場の意見はどうなるんだ」という声も聞こえてきそうだが、ことITに関することでは、現場の意見を吸い上げたからといって、必ずしもコトが良い方向に運ぶわけではない。

現場の感情論で潰された、部署間の感情的トラブルの巻き添えになる*1、細かな要件を聞き過ぎて見積オーバーした、そのせいで些末な仕様変更が多発し保守費用がかさむ etc・・・

では現場の意見など無視してしまえというと、そういうことではない。
ただ、現場の人間はITを含め、仕事で使う道具というのは変化してくれないことが有難いというところに立脚しているため立場が違い過ぎて、そもそも全部が全部を聞いていられないのだ。

情報システム部門メンバの育成について

情報システム部門というのものは、これまでに挙げたように多様な役割を持つ。
また、ある程度の業務ごとに担当分けはされるものの、大抵は少ない人数で運営していることが多く一人何役も兼任せざるを得ないシーンも多々あるため、スペシャリストであることよりも、まずジェネラリストであることが優先されるという側面も持つ。

この「ジェネラリスト」という存在は中々難しく、大抵は何らかの得意分野を軸にして近しい業務領域を吸収していくものだが、これは何らかの軸足があることが前提の話であり、例えば何も持たない新人をジェネラリストに育成することは容易ではない。

仮に新人を入れて色々と見られるようになったとしても、バックボーンを持たない故に「広く浅く」の対症療法的なアプローチしかできず、深いところでの本質的な問題解決ができないのだ。

また、自分に自信のある分野がない、自分自身の拠り所が無いということは、設計であったり交渉であったり何をするにしても自信を持って取り組めないことも大きく、情報システム部門に新人や育ち切っていない者を参画させることは中々難しい。

ではどうすばよいか、というと、やはりある程度のキャリアがありリテラシーも含めてそこそこ育っている人間を中途採用するのが無難なのではないか、という所見。

もちろん、中途採用には採用先の人間が嫌うような「ヘンなクセ」がついていることも多く、俺色に染められる新人が良い!という意見もある。
しかし、IT部門に人数的な余裕のある体制を築くことができている会社であれば別だが、少人数で一人何役も兼任しなければならないような会社では、こういった発想で取り組まざるを得ない面が強いように思う。

もちろん中途で採用するにも、どこかにある育ててもらった会社に教育費用を押しつけているようなものなので、皆が皆そういう取り組みではいけないと思うが、そもそもスキルセットか頭数というリソース面に課題を持っている会社が殆どであるため、手段を選んでいられないというのも事実かと思う。

「仕事を減らすこと」はいけないこと?

基本的には、殆どのサラリーマンは仕事のボリュームが減ってもお給料が減ることはなく、残業代に相当する部分が無くなったとしても、ベースが減ることはない。

それを鑑みれば、業務プロセスの見直しや品質を落とさない程度に手順の簡素化を行い、効率化を図るべきで、それはITによってもたらされるものも多く、IT部門がその職責を担うと考える人も多い。

そういった背景の中、業務改善を進めていると、なぜか改善による受益者に当たる層からしばしば反対されることがある。

大別すると、下記があるように思う。

  • 今までやっていた手順などを変えるのが嫌、というコンサバ根性
  • 「もうその業務はやらなくていい」と言われても、今までやっていたことをやらなくなることに対する漠然とした不安
  • 「仕事を取られる」「仕事がなくなってしまう」という、意味不明な思考

コンサバ根性に関しては本質がタチの悪い保身なので無視して差し支えなく、不安になってしまう人には根気強い説得と「仮に問題が発生しても、あなたに責任はない」と伝えることが肝要で、また時間とともに解決もするのだが、厄介なのが一番最後だ。

とにかく、「仕事を効率的にやりましょう」という活動をしているだけなのだが、どうやら「仕事を取り上げられてしまう」「この人は自分から仕事を取り上げようとしている悪い人」というよくわからない危機感と敵意を向けてくることは珍しくない。
場合によっては、直接的あるいは人づてに妨害してくることもある。

仮にその人の仕事がなくなったとして、組織というものは従業員がヒマしていることを許す程に余裕があるわけではないし、次にやるべき仕事をあてがってくるものだ。

それに、時間に余裕が出てきたら、会社の中に山ほど存在する「今までなかなか手が回らなかったこと」や「本当はコレくらいの水準でやらなければならなかったのに、この程度しかできていなかったこと」に手を付ければよい。

よくわからない危機感を持っている人は、単にそういう仕事を自分で見つければよいわけで、そういうことができるようになったならば、色々な人から頼られるようになるだろうし、結果として「仕事量を少しでも減らさないと、もうキツい」という改善したい・してほしい側になるのではないだろうか。

参考URL

現代の情報システム部門の課題と求められる機能
情報システム部門の役割の変遷に関する一考察
IT部門の四つの未来とCIOの役割
変わるIT部門 [前編]IT部門の役割変化への対応
 ちなみに、この絵は非常に分り易く素晴らしいと思った。
変わるIT部門 [後編]アウトソーシングの有効活用
"持たざるIT"時代のIT部門の姿を考える - 第1章 IT部門は何をコアとすべきか
"持たざるIT"時代のIT部門の姿を考える - 第2章 IT部門は経営から期待されているのか
情シス部門の地位向上(1):企業組織と情報システム部門――「話通じてる?」




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*1 余談だが、仲の悪いA部署とB部署があって、人数が全然違うのに、A部署が10アカウント持つなら5人しかいないけど我々B部署にも10アカウントよこせ!なんていうトラブルも耳にしたことがある。ゲスの極みである。